エリート海上自衛官の最上愛
この街で生きていく
結婚式
晴れ渡った空のもと、青い海がキラキラと輝いている。
ホテルの高層階の部屋で、冷たいガラスに手を着いて、純白のドレスに身を包み芽衣はそれを見つめている。
この街へ来て一年半、こんな景色はもう見慣れたけれど、今日はどこか違って見える。それはもちろん芽衣自身の心境が違うからなのだが……。
ドアがコンコンとノックされて、振り返る。
「はーい」
大きな声で答えると心なしが遠慮がちにドアが開く。入ってきたのは、従伯母だった。
「芽衣……」
背後でバタンとドアが閉まり、彼女はそう言ったきりその場に立ち尽くしている。目にいっぱいの涙が浮かんでいた。
「綺麗よ……」
「おばちゃん、ありがとう」
芽衣の目にも涙が浮かんだ。
晃輝とともに生きていくと決意してから一年が経ったこの日、晴れてふたりは結婚式を挙げることになったのである。
芽衣は花嫁としての準備を終えて控室で開始の合図を待っている。この部屋は芽衣の親族なら出入り自由。すでに両親がいない芽衣にとっては、育ててくれた従伯母が親族だ。
彼女は足早にこちらにやってくる。そして芽衣の手を取った。
「こんな日が来るなんて」
「おばちゃん、今までありがとう。それから……これからもよろしくね」
芽衣は感謝の気持ちを込めてそう言った。
両親が亡くなって芽衣を引き取ってくれた彼女にはいくら感謝してもしきれない。
あの頃は幼くて自分の悲しみで精一杯で、自分のことしか考えられなかったが、成長した今、それがどれだけ大変な決断だったかがよくわかる。
引き取ってからも相当な苦労をかけてしまった。芽衣を引き取っていなければ、彼女には他の人生もあったかもしれないのだ。
「おばちゃん……本当に……たくさん心配かけて、苦労をかけて、私を育ててくれて」
涙が出てうまく伝えられなかった。
「苦労だんて思ってないよ、芽衣。芽衣のお母さん夫婦のことは残念で仕方がないけれど、私は芽衣を育てられてよかったと思う。芽衣は可愛くて頑張りやさんで。私はあなたの存在に何度励まされたか……」
従伯母はそう言って芽衣をソファに座らせ自分も隣の腰を下ろした。
「芽衣を引き取ったのは、もちろん芽衣を放っておけなかったからよ。芽衣のお母さんは小さい頃から私にとって憧れの人だったもの。でももしかしたら、自分のためでもあったのかもって、今は思う」
「自分のため?」
「そう、あの時私は確か三十七歳だったかな? ちょうど結婚を考えていた男性と少し前にひどい別れ方をして、もう一生ひとりで生きていくんだって決めた時だったのよ。仕事はあるから、お金に困ることはないけど、きっと惨めで寂しい人生になるんだろうなって思ってた」
彼女は芽衣の手をギュッと握りにっこりと笑った。
ホテルの高層階の部屋で、冷たいガラスに手を着いて、純白のドレスに身を包み芽衣はそれを見つめている。
この街へ来て一年半、こんな景色はもう見慣れたけれど、今日はどこか違って見える。それはもちろん芽衣自身の心境が違うからなのだが……。
ドアがコンコンとノックされて、振り返る。
「はーい」
大きな声で答えると心なしが遠慮がちにドアが開く。入ってきたのは、従伯母だった。
「芽衣……」
背後でバタンとドアが閉まり、彼女はそう言ったきりその場に立ち尽くしている。目にいっぱいの涙が浮かんでいた。
「綺麗よ……」
「おばちゃん、ありがとう」
芽衣の目にも涙が浮かんだ。
晃輝とともに生きていくと決意してから一年が経ったこの日、晴れてふたりは結婚式を挙げることになったのである。
芽衣は花嫁としての準備を終えて控室で開始の合図を待っている。この部屋は芽衣の親族なら出入り自由。すでに両親がいない芽衣にとっては、育ててくれた従伯母が親族だ。
彼女は足早にこちらにやってくる。そして芽衣の手を取った。
「こんな日が来るなんて」
「おばちゃん、今までありがとう。それから……これからもよろしくね」
芽衣は感謝の気持ちを込めてそう言った。
両親が亡くなって芽衣を引き取ってくれた彼女にはいくら感謝してもしきれない。
あの頃は幼くて自分の悲しみで精一杯で、自分のことしか考えられなかったが、成長した今、それがどれだけ大変な決断だったかがよくわかる。
引き取ってからも相当な苦労をかけてしまった。芽衣を引き取っていなければ、彼女には他の人生もあったかもしれないのだ。
「おばちゃん……本当に……たくさん心配かけて、苦労をかけて、私を育ててくれて」
涙が出てうまく伝えられなかった。
「苦労だんて思ってないよ、芽衣。芽衣のお母さん夫婦のことは残念で仕方がないけれど、私は芽衣を育てられてよかったと思う。芽衣は可愛くて頑張りやさんで。私はあなたの存在に何度励まされたか……」
従伯母はそう言って芽衣をソファに座らせ自分も隣の腰を下ろした。
「芽衣を引き取ったのは、もちろん芽衣を放っておけなかったからよ。芽衣のお母さんは小さい頃から私にとって憧れの人だったもの。でももしかしたら、自分のためでもあったのかもって、今は思う」
「自分のため?」
「そう、あの時私は確か三十七歳だったかな? ちょうど結婚を考えていた男性と少し前にひどい別れ方をして、もう一生ひとりで生きていくんだって決めた時だったのよ。仕事はあるから、お金に困ることはないけど、きっと惨めで寂しい人生になるんだろうなって思ってた」
彼女は芽衣の手をギュッと握りにっこりと笑った。