エリート海上自衛官の最上愛
 彼はそう胸を張るが、そもそも適任者がいないならバージンロードを歩くという形式すら変えてもいいと言われていた。でも芽衣は、それについては言わないことにする。

 うみかぜで式の相談をしている際に、直哉が晃輝に直談判して晃輝が快諾したのも事実だ。

「それに、俺は芽衣の“兄“だ。兄がバージンロードを歩くことを嫌がるような、器の小さい男に芽衣はやれない」

「やれないって……あんたが決めることじゃないだろうに」

 従伯母が呆れてそう言った。

「とにかく、新郎のことは気にしなくていい。まったく“気を悪くされて“はいない」

 直哉が自身満々に言い切った。

「……だけどそういえば、あの時あいつ、『その方が、直哉くんにとってもいいかもしれないね』となんとか言ってたな。あれは……」

 直哉がぶつぶつと言い、従伯母がこりゃダメだというように肩をすくめた時。 

 ドアがコンコンとノックされる。

「はい」

 答えると、ドアが開き晃輝が入ってきた。

「芽衣、プランナーの方が、もう少ししたら最終打ち合わせでこちらに見えるようだ」

 彼は、事前の顔合わせで何度か会ったことのある従伯母と直哉に挨拶をして芽衣を見て、瞬きをして口を閉じた。

「わかりました、ここで待っていればいいんですか?」

 答えながら、芽衣は動悸が早くなるのを感じていた。晃輝が正装だったからである。しかも通常のモーニングコートではなく、海上自衛官としての正装だ。胸元に階級を表す勲章が輝いている。

 カッコいいなんて言葉ではとても足りない。

 一方で、晃輝の方もいつもと違う芽衣に驚いているようだった。もちろんお互いに、衣装合わせの際には当日の服装を見てはいるが、メイクをして髪を整えているのとまた違う。

< 175 / 182 >

この作品をシェア

pagetop