エリート海上自衛官の最上愛
「芽衣……」

 彼が口を開きかけた時。

「あーそうだ! おばちゃん、あっちでドリンクサービスがあるから行こうぜって誘おう思ってたんだ。行こう。芽衣、十分後に戻るから」

 少しわざとらしくそう言って直哉が立ち上がった。

「そうね、芽衣。後でね」

 従伯母もそう言ってふたりはいそいそと部屋を出ていこうとする。芽衣と晃輝をふたりきりにしてくれるつもりだ。

「直哉くん」

 晃輝が直哉を呼び止めた。

「今日はありがとう。バージンロードの件、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げる。ピシッとお辞儀をする晃輝の前で、直哉がガクッと項垂れた。

「あー俺、なんか急に自信がなくなってきた……。ちゃんとやれるかな……」

「もーなに言ってんのよ今さら。ほらしっかりして。本番で泣いたりしないでよ!」

 従伯母に背中をバシバシ叩かれながら、彼は部屋を出て行った。

 ドアが閉まるのを確認して、直哉が芽衣を振り返った。

「ごめん、芽衣。俺じゃましたかな。従伯母さんとゆっくり話をしていたんじゃないか」
「ううん、大丈夫。おばちゃんと話してたところに直くんが乱入してきたところだったから」

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