エリート海上自衛官の最上愛
 芽衣は首を横に振る。視線は晃輝に吸い寄せられたままだった。
久しぶりに、恋に落ちたあの時の強い衝動が蘇った。

 ずっと昔、まだ“生まれる前の芽衣“も、“彼“にこんな風に胸をときめかせたのだろう。

 そして、彼の方も芽衣と同じことを感じているようだった。

 芽衣をじっと見つめたまま、ソファのところにやってきて、芽衣の隣に腰を下ろした。

「思った通り、いや想像以上に綺麗だよ。芽衣の花嫁姿……やっと見られた」

 その言葉は、晃輝からの気持ちでもあり“彼“からの想いでもある。

「やっと見られた。今度こそ幸せになろう。もう絶対に離れない」

「はい……」

 熱い想いを堪えきれず芽衣の目に涙が浮かぶ。その涙を晃輝の指がそっと拭った。

 なにかに導かれるようにふたりは出会い愛し合った。

 それを運命というならばそうだろう。

 けれど、今ここでこうしていられるのは決してそれだけではダメだったという確信がある。

 芽衣は、目の前にいる彼を愛し、彼と生きていくことを強く願った。そのために大きなものを乗り越えた。

 今こうしていられるのは、紛れもなく今のふたりの絆なのだ。

「芽衣、愛してる」

 真っ直ぐに自分を見つめる彼の視線に、芽衣の心は熱くなる。この視線に導かれるようにしてここまで来たのだという確信がある。

 これからも彼のそばでこうしていたい。たとえ離れている時間があったとしても、心はいつも同じところにある。

「はい、私も晃輝さんを愛してます」

 答えると、唇にそっと触れるだけのキスを交わす。

 ふたりだけの誓いのキスを、窓の外の大海原が見守っていた。
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