エリート海上自衛官の最上愛

再びうみかぜにて

 髪を撫でられるのを感じて、芽衣の意識は浮上する。
 ゆっくり目を開くと、晃輝が優しい目で自分を見つめている。

「ん……もう、時間……?」

 ぼんやりとしたまま芽衣は彼に尋ねた。
 昨夜は、この夫婦のベッドで一緒に眠りについた。その彼が先に起きているということは、寝坊してしまったのかと思ったのだ。

「いや。まだ時間はある。俺の方が早く目が覚めただけだ。起こしてしまってごめん」

 枕元の時計を確認すると、時刻は午前五時半。

 彼が出勤するのは午前七時の予定だから、まだあと一時間半ほどある。彼の方はまだ部屋着だとはいえ、寝起きというわけではなさそうだ。髪が湿っている。朝起きてトレーニングをした後に、シャワーを浴びてきたのだろう。

「起きてるなら起こしてくれればよかったのに」

 芽衣は目をこすりながら起き上がる。晃輝がふっと笑った。

「寝顔を見ていたんだよ。目に焼き付けておきたくて」

 そう言って優しく笑う彼に、芽衣の胸がちくりと痛んだ。

 今日から彼は長期の航海に出る。

 期間は三カ月。帰ってくる頃には季節は変わっているだろう。

 晃輝が一旦ベッドから下りて寝室のカーテンを開く。まだ日が完全に昇り切っていない海が淡く青い光を反射させている。

 戻ってきてベッドの上で芽衣を後ろから抱きしめた晃輝が優しく耳に囁いた。

「大丈夫か?」

 その問いかけは、昨夜たくさん泣いてしまった芽衣を心配しての言葉だ。

 彼とともに生きていくと決意したとはいえ、離れる時の寂しさと心配だという想いは一切薄らぐことはない。

 結婚してから約半年経つというのに、まだ目が腫れるくらい泣いてしまうのだから。

 それでも彼とともに生きていくと決めたことを後悔したことは一度もなかった。

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