一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
しばらくの間の後、彼は静かに口を開いた。
「いや、事情はよくわかった。話してくれてありがとう。言いにくいことを聞いてしまって申し訳ない」
芽衣は首を横に振る。
「大丈夫です」
ここまで詳細に話すとは予想外だったが、彼が安心できたのならそれでいい。
「情けない話ですが……」
セクハラくらいで目標を諦めて退職するなんて、日々厳しい訓練に耐えている彼からしたら根性なしだと思われるだろう。
——でも。
「いや、情けないとは思わない」
きっぱりとした答えが返ってきて、驚いて芽衣は顔を上げる。晃輝が真っ直ぐに自分を見ていた。
「悪いのその上司だ。君にはなんの落ち度もない。被害者だろう。情けないなんて思わないよ。追い詰められると人は思考が停止してなにもできなくなってしまう。それなのに君は頑張って自力で、そのひどい環境から抜け出した。むしろよくやったと思う」
低い声で彼は自分の意見を述べる。
その内容に、芽衣は言葉を失った。あの出来事をまさかそんな風に言ってもらえるとは思わなかったからだ。
晃輝が眉を寄せた。
「ただ……そんな理不尽なことのせいで、それまで築いてきたキャリアを失うのはつらかっただろう」
真っ直ぐに芽衣を心配するその言葉に、芽衣の目に、また新しい涙が浮かぶ。あの時の悔しい思いと悲しい気持ちが蘇る。
彼にはっきりと言葉にしてもらえて、改めて自分は怒っていた、つらかったのだと気がついた。
セクハラとパワハラに耐えられず大好きな仕事を辞めなくてはならなかったのは、すべては自分が弱かったせいだと自分で自分を責めていた。悲しんだりする資格などないのだと思っていたけれど、そうではなかったのだ。
悪いのは芽衣ではなく、間違いなく相手なのだ。
今それを晃輝に力強く言ってもらえたことで、救われたような気持ちになる。心のどこかで辞めたことを後悔していたけれど、それもすべて吹き飛んだ。
この街へ来て本当によかった。キャリアは失ったけれど、これでいい。自分は間違ったことをしたわけではなかったのだから。
もう過去のことは考えずに、前だけを見て進もう。
「疑ってたくせにと思われるかもしれないが、うみかぜに来てくれてよかったと思う。現に父は喜んでいるしね」
「いや、事情はよくわかった。話してくれてありがとう。言いにくいことを聞いてしまって申し訳ない」
芽衣は首を横に振る。
「大丈夫です」
ここまで詳細に話すとは予想外だったが、彼が安心できたのならそれでいい。
「情けない話ですが……」
セクハラくらいで目標を諦めて退職するなんて、日々厳しい訓練に耐えている彼からしたら根性なしだと思われるだろう。
——でも。
「いや、情けないとは思わない」
きっぱりとした答えが返ってきて、驚いて芽衣は顔を上げる。晃輝が真っ直ぐに自分を見ていた。
「悪いのその上司だ。君にはなんの落ち度もない。被害者だろう。情けないなんて思わないよ。追い詰められると人は思考が停止してなにもできなくなってしまう。それなのに君は頑張って自力で、そのひどい環境から抜け出した。むしろよくやったと思う」
低い声で彼は自分の意見を述べる。
その内容に、芽衣は言葉を失った。あの出来事をまさかそんな風に言ってもらえるとは思わなかったからだ。
晃輝が眉を寄せた。
「ただ……そんな理不尽なことのせいで、それまで築いてきたキャリアを失うのはつらかっただろう」
真っ直ぐに芽衣を心配するその言葉に、芽衣の目に、また新しい涙が浮かぶ。あの時の悔しい思いと悲しい気持ちが蘇る。
彼にはっきりと言葉にしてもらえて、改めて自分は怒っていた、つらかったのだと気がついた。
セクハラとパワハラに耐えられず大好きな仕事を辞めなくてはならなかったのは、すべては自分が弱かったせいだと自分で自分を責めていた。悲しんだりする資格などないのだと思っていたけれど、そうではなかったのだ。
悪いのは芽衣ではなく、間違いなく相手なのだ。
今それを晃輝に力強く言ってもらえたことで、救われたような気持ちになる。心のどこかで辞めたことを後悔していたけれど、それもすべて吹き飛んだ。
この街へ来て本当によかった。キャリアは失ったけれど、これでいい。自分は間違ったことをしたわけではなかったのだから。
もう過去のことは考えずに、前だけを見て進もう。
「疑ってたくせにと思われるかもしれないが、うみかぜに来てくれてよかったと思う。現に父は喜んでいるしね」