エリート海上自衛官の最上愛
「そうなんですよ。宿直の日なんかに急に食べたくなったりして困ります。で、勤務を終えて食べに来たら売り切れだったことがあって。悶絶しましたよ」
冗談を言う客の言葉に、晃輝が笑って答える。
「そんなにか」
「衣笠一尉も次の宿直日はきっとそうなりますよ」
そんな話をしながら、ふたりは会計を済ませて帰っていった。
「同じ隊の方なんですか?」
彼らを見送ってから、芽衣は彼に問いかけた。随分と親しげにしていた。
「いや、だが顔見知りだ。海自は結束が強いから。……まあ皆家族みたいなもんだな」
あっという間に小鉢のポテトサラダを食べ終えて、晃輝が手を合わせた。
「本当に美味かったよ。親父が絶賛するのも納得だ。これってイタリアン?」
「どちらかというとスペイン料理に近いかな? 隠し味にバルサミコ酢を使っていて」
手放しの賞賛に芽衣は頬を染めて答えた。
「スペインか。確かにあのあたりは料理が美味しかったような」
「行かれたことがあるんですか?」
「仕事だけどね」
「お仕事で?」
考えてみれば彼は海外演習から戻ってきたばかり。横須賀にいない時はいろいろな街へ行っているということか。仕事だとしても芽衣には羨ましく思えた。
昔から世界中の本場の料理を食べる旅をしてみたいと思っているからだ。
イタリア、フランス……アジアやアラブ料理にも興味がある。調理師学校時代の友人の中には実際に行った者もいたけれど、芽衣には叶えられない夢だった。
そんなことができるほどの金銭的な余裕がないからだ。両親亡き後、従伯母に育ててもらった芽衣は、彼女に金銭面を頼るのは高校までと決めていて、調理師学校の学費は自分のバイト代と奨学金でまかなった。
ホテル時代の給料は、奨学金の返済と生活で精一杯であまり貯金もできなかった。
「仕事で海外に行けるなんて羨ましい……」
本音が漏れてしまう芽衣に、晃輝が苦笑した。
「観光はできないよ。基本的には港から出ないからね。艦内にいることには変わりないからあまり外国にいるという感じはしない」
「そうなんですか……そうですよね、お仕事ですもんね。なんかちょっと勿体無い感じがしますけど」
「もちろん家族に土産を買う時間くらいはあるけどね。それから景色を堪能することもできる」
晃輝の言葉に芽衣は目を輝かせた。
冗談を言う客の言葉に、晃輝が笑って答える。
「そんなにか」
「衣笠一尉も次の宿直日はきっとそうなりますよ」
そんな話をしながら、ふたりは会計を済ませて帰っていった。
「同じ隊の方なんですか?」
彼らを見送ってから、芽衣は彼に問いかけた。随分と親しげにしていた。
「いや、だが顔見知りだ。海自は結束が強いから。……まあ皆家族みたいなもんだな」
あっという間に小鉢のポテトサラダを食べ終えて、晃輝が手を合わせた。
「本当に美味かったよ。親父が絶賛するのも納得だ。これってイタリアン?」
「どちらかというとスペイン料理に近いかな? 隠し味にバルサミコ酢を使っていて」
手放しの賞賛に芽衣は頬を染めて答えた。
「スペインか。確かにあのあたりは料理が美味しかったような」
「行かれたことがあるんですか?」
「仕事だけどね」
「お仕事で?」
考えてみれば彼は海外演習から戻ってきたばかり。横須賀にいない時はいろいろな街へ行っているということか。仕事だとしても芽衣には羨ましく思えた。
昔から世界中の本場の料理を食べる旅をしてみたいと思っているからだ。
イタリア、フランス……アジアやアラブ料理にも興味がある。調理師学校時代の友人の中には実際に行った者もいたけれど、芽衣には叶えられない夢だった。
そんなことができるほどの金銭的な余裕がないからだ。両親亡き後、従伯母に育ててもらった芽衣は、彼女に金銭面を頼るのは高校までと決めていて、調理師学校の学費は自分のバイト代と奨学金でまかなった。
ホテル時代の給料は、奨学金の返済と生活で精一杯であまり貯金もできなかった。
「仕事で海外に行けるなんて羨ましい……」
本音が漏れてしまう芽衣に、晃輝が苦笑した。
「観光はできないよ。基本的には港から出ないからね。艦内にいることには変わりないからあまり外国にいるという感じはしない」
「そうなんですか……そうですよね、お仕事ですもんね。なんかちょっと勿体無い感じがしますけど」
「もちろん家族に土産を買う時間くらいはあるけどね。それから景色を堪能することもできる」
晃輝の言葉に芽衣は目を輝かせた。