エリート海上自衛官の最上愛
 階段を下りていく広い背中を見送って、家の中へ入り、芽衣は携帯を抱きしめる。早くなった胸の鼓動はいつまでも落ちつかなかった。

 なんだかまだ夢を見ているような気分だった。

 思いがけず晃輝と急接近したことを、どう受け止めればいいかわからない。

 連絡先を交換したとはいえ、ふたりはただのオーナーの息子と従業員という関係。それだけと言えばそうだろうが、芽衣の胸は明らかにそれだけではない特別な反応を示している。

 この気持ちには、覚えがあるような気がする。まだ高校生だった時に、クラスの男の子に抱いたあの気持ちによく似ている……。

 けれど彼は出会ったばかりの人なのにと考えると、ただの気のせいなのだろうと思い直す。

 きっと、晃輝のような素敵な人と思いがけず親しくなって、優しくされて、舞い上がってしまっているのだ。

 靴を脱いで部屋へ上がり窓際に歩み寄る。いつもはきっちりと閉めているカーテンをそっと開けると、視界に煌びやかな横須賀の夜景が広がった。

 キラキラと輝く光の中、芽衣は晃輝のマンションを探す。

 たった一度行っただけ、暗くてよくわからないし、そもそもここから見えるかどうかもわからないのに。

 ——それでも、どうしてかそうせずにはいらなくて、ドキドキと高鳴る胸に、携帯を抱きしめたまま、芽衣はいつまでも窓の外を見つめていた。
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