エリート海上自衛官の最上愛
《今日は晃輝さんがお好きなカレイを仕入れることができました》

 メッセージの二行目に付け加えて、またしばらく考える。

「このくらいならいいよね」

 自分を勇気づけるようにひとり言を言ってから、思い切って、えいや!と送信ボタンを押した。そしてまた空を見上げる。

 ——彼のことをもっと知りたい。

 ここのところ芽衣は、彼に会うたびにそう思うようになっている。

 けれど、この気持ちがどういう種類のものなのか。それについては今は深く考えないようにしている。

 彼にとって芽衣の存在は、父親の店の従業員。それ以上でもそれ以下でもないはずだ。ましてや特別な気持ちを持たれるなんて想定外のことだろうから。

 一方で、芽衣にとってはこの出会いは特別だ。

 ホテルでのつらい出来事の中、泣きながらひとりで下した決断を、彼に力強く肯定してもらえたことで、心から前を向いて進めるようになったのだ。

 その彼に、自分の料理を食べてもらえる。今はそれで十分だ。

 芽衣が送ったメッセージの返事はすぐに返ってきた。

《それを楽しみに今日一日頑張るよ》

 芽衣の鼓動が飛び跳ねて、嬉しい気持ちが胸いっぱいに広がっていく。

 振り返り、晃輝のマンションの方を見ると、その向こうは青い海が広がっている。

 ——私も、頑張ろ。

 スキップしたくなるくらい胸が弾むのを感じながら、芽衣はまた歩き出した。
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