一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
暖簾をくぐり外へ出ると、少し潮の香りがする風が吹き抜けて芽衣の前髪がなびいた。
「マスターお疲れさまです。お先に失礼します」
芽衣は店の中へ声をかける。
「はい、おやすみ。また明日」
まだ店の中にいるいく人かの客たちからも声がかかった。
「芽衣ちゃん、疲れ」
「衣笠一尉お疲れさまでした」
「ああ、お疲れ」
芽衣の隣で晃輝が答えた。
朝、メッセージをもらった通り、晃輝はいつもの時間にうみかぜに姿を見せた。
芽衣が仕入れて腕によりをかけたカレイの煮付け定食を美味しそうに食べてくれた。そして九時になったから仕事を終えて帰宅する芽衣と一緒に店外へ出てきたのである。
「晃輝、じゃあ頼むな」
マスターからの言葉に晃輝は素直に頷いた。
「ごちそうさま」
「送るだけだぞ。絶対に部屋に上がるなよ」
「当たり前だろ、わかってるよ」
マスターの見当違いの忠告を、恥ずかしく思いつつ、そんな気楽なやり取りをするふたりの姿に、芽衣の胸が温かくなった。
芽衣がいる夜営業へはじめて晃輝が来た際、部屋まで送ってもらってから、彼が来た日は毎回こうして送ってくれるようになったのだ。
もちろんはじめは芽衣も遠慮した。どう考えても送るというほどの距離ではないし申し訳ないからだ。
でもいくら言ってもマスターは譲らないし、晃輝も当然のようにそうしようとするので無理に拒否するのはやめにしたのだ。
本当のところ芽衣にとってはこの時間が密かな楽しみでもある。
階段を上り短い廊下を歩く少しの間だけ、晃輝とふたりきりで話をすることができる。
「カレイおいしかったよ、ごちそうさま」
「こちらこそ、ありがとうございます。カレイ、食べてもらえて嬉しかったです。仕入れる時、晃輝さんお好きだって言ってたなーって思ったから」
食べてもらえたら嬉しいなと思いながら、今日はカレイを仕入れることに決めたのだ。そしたら本当に来てくれることがわかって、今日一日張り切って過ごせた。
嬉しい気持ちで胸をいっぱいにしながらそう言って、芽衣はハッとして口を噤む。本音だとはいえ、踏み込みすぎの表現のように思えたからだ。
これでは芽衣が日頃から晃輝のことばかり考えているように思われてしまう。
「あ……も、もちろん、他のお客さんにも喜んでもらえるだろうなと思ったからカレイを仕入れたんですが……」
「マスターお疲れさまです。お先に失礼します」
芽衣は店の中へ声をかける。
「はい、おやすみ。また明日」
まだ店の中にいるいく人かの客たちからも声がかかった。
「芽衣ちゃん、疲れ」
「衣笠一尉お疲れさまでした」
「ああ、お疲れ」
芽衣の隣で晃輝が答えた。
朝、メッセージをもらった通り、晃輝はいつもの時間にうみかぜに姿を見せた。
芽衣が仕入れて腕によりをかけたカレイの煮付け定食を美味しそうに食べてくれた。そして九時になったから仕事を終えて帰宅する芽衣と一緒に店外へ出てきたのである。
「晃輝、じゃあ頼むな」
マスターからの言葉に晃輝は素直に頷いた。
「ごちそうさま」
「送るだけだぞ。絶対に部屋に上がるなよ」
「当たり前だろ、わかってるよ」
マスターの見当違いの忠告を、恥ずかしく思いつつ、そんな気楽なやり取りをするふたりの姿に、芽衣の胸が温かくなった。
芽衣がいる夜営業へはじめて晃輝が来た際、部屋まで送ってもらってから、彼が来た日は毎回こうして送ってくれるようになったのだ。
もちろんはじめは芽衣も遠慮した。どう考えても送るというほどの距離ではないし申し訳ないからだ。
でもいくら言ってもマスターは譲らないし、晃輝も当然のようにそうしようとするので無理に拒否するのはやめにしたのだ。
本当のところ芽衣にとってはこの時間が密かな楽しみでもある。
階段を上り短い廊下を歩く少しの間だけ、晃輝とふたりきりで話をすることができる。
「カレイおいしかったよ、ごちそうさま」
「こちらこそ、ありがとうございます。カレイ、食べてもらえて嬉しかったです。仕入れる時、晃輝さんお好きだって言ってたなーって思ったから」
食べてもらえたら嬉しいなと思いながら、今日はカレイを仕入れることに決めたのだ。そしたら本当に来てくれることがわかって、今日一日張り切って過ごせた。
嬉しい気持ちで胸をいっぱいにしながらそう言って、芽衣はハッとして口を噤む。本音だとはいえ、踏み込みすぎの表現のように思えたからだ。
これでは芽衣が日頃から晃輝のことばかり考えているように思われてしまう。
「あ……も、もちろん、他のお客さんにも喜んでもらえるだろうなと思ったからカレイを仕入れたんですが……」