エリート海上自衛官の最上愛
取り繕うように付け加えると、晃輝はふっと笑う。
「美味しかったよ」
動揺する芽衣とは違い、余裕のある答えだ。それを芽衣は少し寂しく思う。
彼は芽衣より七歳も年上で、恋愛経験も豊富なのだろう。そんな彼にとってはこれくらいのやり取りも大したことではないのだ。
「そういえばこの前秋月さんのポテトサラダを褒めていた隊員がいただろう? 昨日職場で会ったんだ。彼ここのところ忙しくてうみかぜに来られていないらしい。禁断症状が出そうだって言ってたよ。だから、俺は今日行くって自慢しておいた」
「ええ⁉︎ 自慢したんですか」
「ああ、悔しがってたな」
そう言って、くっくと肩を揺らして笑う。その笑顔に、芽衣はドキドキが止まらなくなってしまう。
晃輝がうみかぜに頻繁に顔を見せると後輩たちが気を遣うだろうと彼自身は心配していたが、蓋を開けてみるとまったくそんなことはなかった。
皆晃輝がやってくると気楽に声をかけ、相談を持ちかけアドバイスを受けていることもある。後輩たちから憧れだと言われる所以は、成績優秀な幹部候補だというだけでなく、気さくで面倒見のいい人柄だからなのだ。
階段を上り切ると、あっという間に芽衣の玄関の前に着いてしまう。家までの距離が、もっと長い道のりだったらよかったのにと毎度芽衣は残念に思う。
芽衣の扉の三歩手前で、晃輝は足を止めた。
マスターからの忠告などなくても、彼は絶対にそこよりこちらへは来なかった。
その気遣いに、芽衣は救われたような気持ちになる。
彼が毎回そこでぴたりと止まってくれるたびに、怖くて嫌だった記憶が薄らいでいくような気がするからだ。チーフとのことがあってから男性不審になりかけていたけれど、その気持ちも、少しずつ解れていくようだった。
「またメッセージを入れるよ。次は多分……四日後くらいになりそうだ」
「美味しかったよ」
動揺する芽衣とは違い、余裕のある答えだ。それを芽衣は少し寂しく思う。
彼は芽衣より七歳も年上で、恋愛経験も豊富なのだろう。そんな彼にとってはこれくらいのやり取りも大したことではないのだ。
「そういえばこの前秋月さんのポテトサラダを褒めていた隊員がいただろう? 昨日職場で会ったんだ。彼ここのところ忙しくてうみかぜに来られていないらしい。禁断症状が出そうだって言ってたよ。だから、俺は今日行くって自慢しておいた」
「ええ⁉︎ 自慢したんですか」
「ああ、悔しがってたな」
そう言って、くっくと肩を揺らして笑う。その笑顔に、芽衣はドキドキが止まらなくなってしまう。
晃輝がうみかぜに頻繁に顔を見せると後輩たちが気を遣うだろうと彼自身は心配していたが、蓋を開けてみるとまったくそんなことはなかった。
皆晃輝がやってくると気楽に声をかけ、相談を持ちかけアドバイスを受けていることもある。後輩たちから憧れだと言われる所以は、成績優秀な幹部候補だというだけでなく、気さくで面倒見のいい人柄だからなのだ。
階段を上り切ると、あっという間に芽衣の玄関の前に着いてしまう。家までの距離が、もっと長い道のりだったらよかったのにと毎度芽衣は残念に思う。
芽衣の扉の三歩手前で、晃輝は足を止めた。
マスターからの忠告などなくても、彼は絶対にそこよりこちらへは来なかった。
その気遣いに、芽衣は救われたような気持ちになる。
彼が毎回そこでぴたりと止まってくれるたびに、怖くて嫌だった記憶が薄らいでいくような気がするからだ。チーフとのことがあってから男性不審になりかけていたけれど、その気持ちも、少しずつ解れていくようだった。
「またメッセージを入れるよ。次は多分……四日後くらいになりそうだ」