エリート海上自衛官の最上愛
「明後日のイベント……ですか?」

「そう。基地内に一般の方をお招きして見学してもらったり出店を出したりするんだよ。海上自衛隊の仕事を街の人に知ってもらうお祭りみたいなものかな。希望すれば、船艦の中を見学することもできるよ」

「へぇ、自衛隊ってそんなこともされるんですね」

 自衛隊の基地なんて一般人は絶対に入れないものだと思っていた。それなのに船の中まで見学できるイベントがあるなんて。

「毎年、近くに住む子供たちが来てくれるんだ。海上自衛隊の仕事知ってもらうんだよ。なるべく基地を身近に感じてもらいたいからね」

「僕は小さい頃にこういうイベントに参加して自衛隊に憧れるようになったんです」

 隊員たちは、口々にイベントについて話し出す。一般客にとってお祭りのようなものだと言いながら、彼ら自身も楽しみにしているようだった。

「芽衣ちゃんも来てよ。いろいろ出し物もあって楽しいよ。日曜日は定休日だよね?」

「え?」

「いずもの中に入れる機会なんてなかなかないよー」

「俺案内役なんだ。午前中! 芽衣ちゃん来てくれるなら張り切っちゃうなー」

 突然の誘いに芽衣は少し戸惑う。

 イベントや出し物といった言葉には惹かれるが、基地の中というのに引っかかる。

 以前ほど海を見てドキドキすることは少なくなったが、さすがに海のすぐ近くの基地まで行き船艦を近くで見たいとは思わなかった。ましてや中に入るなんて絶対に無理だ。

「えーっと」

 かといって、彼らの話を無下にもできなかった。皆、好意で誘ってくれているのだ。

「もしかしたら、出かけるかもしれなくて……日曜日は溜まってる買い物をしなくちゃいけないし」

 とりあえず、あたりさわりのないことを言って断ろうとするが、酒が入っているからだろう。彼らは簡単には引き下がらなかった。

「えー、それって土曜の午後でもいいじゃん。なんならその買い物、俺が付き合ってあげようか? 力持ちだから全部持ってあげるよ。明日は俺非番だし」

 ——そこで。

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