エリート海上自衛官の最上愛
「……ただいま」
「晃(こう)輝(き)じゃないか。おかえり」
厨房から戻ってきたマスターが、男性に声をかける。
驚いて芽衣は振り返った。マスターが客におかえりと言うはいつものこと。名前を呼んでいるのも珍しいことではないけれど、下の名前を口にするのははじめてだ。
不思議に思う芽衣に向かって、マスターがにっこりと笑った。
「芽衣ちゃん、どうして晃輝が俺の息子だってわかったの?」
「え? 息子さん……なんですか?」
「あれ? わかってなかったの? てっきりおかえりと声をかけたから……。そう、こいつは俺の息子だよ。いずも所属の一等海尉だ」
マスターに三十三歳の息子がいるのは知っていた。
海上自衛官で基地近くのマンションでひとり暮らしをしていると聞いていたが、会うのは今日がはじめてだ。芽衣がここで働きはじめから今日まで、長期の訓練に出ていてずっと戻ってこなかったからだ。
そう言われて改めて見ると、男性はマスターと目元がよく似ている。ただ、柔和な雰囲気のマスターと違い、現役の自衛官らしい厳格な雰囲気を漂わせている。
父親の店に見知らぬ女性がいることを不審に思っているのか、訝しむように芽衣を見ている。
「衣笠一尉、お疲れさまです」
奥の席にいた若い客から声がかかる。顔見知りなのだろう。
自衛官は階級が上の者を名前と階級で呼ぶ。他の客たちも立ち上がり敬礼しているということは、この場にいる中で彼が一番階級が上だということだ。
「お疲れ」
晃輝が答え、皆が座るのを見届けてから彼は自分もカウンターに腰掛けた。
マスターが、晃輝に芽衣を紹介する。
「晃輝、彼女は秋月芽衣さん。三カ月前から働いてもらっているんだよ。もうすっかり常連さんたちの人気者だ」
「……よろしく」
晃輝が芽衣に向かって口を開いた。
「晃(こう)輝(き)じゃないか。おかえり」
厨房から戻ってきたマスターが、男性に声をかける。
驚いて芽衣は振り返った。マスターが客におかえりと言うはいつものこと。名前を呼んでいるのも珍しいことではないけれど、下の名前を口にするのははじめてだ。
不思議に思う芽衣に向かって、マスターがにっこりと笑った。
「芽衣ちゃん、どうして晃輝が俺の息子だってわかったの?」
「え? 息子さん……なんですか?」
「あれ? わかってなかったの? てっきりおかえりと声をかけたから……。そう、こいつは俺の息子だよ。いずも所属の一等海尉だ」
マスターに三十三歳の息子がいるのは知っていた。
海上自衛官で基地近くのマンションでひとり暮らしをしていると聞いていたが、会うのは今日がはじめてだ。芽衣がここで働きはじめから今日まで、長期の訓練に出ていてずっと戻ってこなかったからだ。
そう言われて改めて見ると、男性はマスターと目元がよく似ている。ただ、柔和な雰囲気のマスターと違い、現役の自衛官らしい厳格な雰囲気を漂わせている。
父親の店に見知らぬ女性がいることを不審に思っているのか、訝しむように芽衣を見ている。
「衣笠一尉、お疲れさまです」
奥の席にいた若い客から声がかかる。顔見知りなのだろう。
自衛官は階級が上の者を名前と階級で呼ぶ。他の客たちも立ち上がり敬礼しているということは、この場にいる中で彼が一番階級が上だということだ。
「お疲れ」
晃輝が答え、皆が座るのを見届けてから彼は自分もカウンターに腰掛けた。
マスターが、晃輝に芽衣を紹介する。
「晃輝、彼女は秋月芽衣さん。三カ月前から働いてもらっているんだよ。もうすっかり常連さんたちの人気者だ」
「……よろしく」
晃輝が芽衣に向かって口を開いた。