エリート海上自衛官の最上愛
 晃輝だ。

 彼も、いつもうみかぜに来る時の私服ではなく制服を身に着けている。

 紺色に金色の刺繍が施された階級章が付けられた白い襟付きのシャツの半袖から鍛え上げられた腕が覗いている。普段とは少し違った雰囲気の彼に芽衣の鼓動はスピードを上げていく。

 彼の制服姿は、はじめて見たはずなのに、懐かしいような不思議な感覚に襲われる。今すぐに駆け出して彼の元へ行きたいという強い衝動が全身を駆け抜けた。

 私は彼とともにいるべきだ、という確信が胸に広がる。

 一般客に向かって穏やかな表情で見学者を見送る晃輝から視線を外せないまま、芽衣はそちらへ向かって一歩踏み出す。

 ——その時。

「案内の人、めっちゃカッコよかったね」

「ね! 写真撮ってもらいたかった!」

 大学生くらいの女性グループがテンション高く話しながら芽衣のすぐそばを通りすぎる。ハッとして、芽衣は足を止めた。

 心を落ち着かせようと、深呼吸をする。この感覚に、覚えがあるような。晃輝とはじめてあった日、彼の姿を見て「おかえりなさい」と言ってしまったときの……。

「秋月さん」

 声をかけられて顔を上げると、晃輝が小走りに芽衣のところへやってきた。

「来てくれたんだね」

「こんにちは……」

 さっきの動揺からまだ完全には抜け出せず、小さな声で答えるのが精一杯。顔が赤くなっているのが自分でもわかった。

「今来たとこ?」

「いえ、先にあっちのブースを見て回りました。お仕事紹介いろいろあってすごく興味深かったです。難しい話もわかりやすく展示してあって」

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