エリート海上自衛官の最上愛
 前知識のない芽衣でも自衛隊の職務内容が本当によくわかった。

「晃輝さんのお仕事を知るのにぴったりのイベントだったんですね」

「わかりやすかったならよかったよ。今日はそういう目的のイベントだから」

 やっぱり来てよかったと芽衣は思う。重要な使命は、彼の一部なのだ。だからこそ日々の厳しい訓練に耐えられるのだろう。彼と一緒にいたいならば、それを知っておくべきだ。

「晃輝さんのお仕事のこと、少しだけどわかりました」

 今なら、きちんとした判断で答えを出せる自信がある。熱い思いと揺るぎない使命感を持って職務を全うしようとする彼を心から素敵だと思うから。

 想いを込めてそう言うと、晃輝が綺麗な目を細めて微笑んだ。そしてさりげなくほんの一瞬、芽衣の方へ身体を傾けた。

「七時に部屋へ迎えに行く」

 周りの音が一瞬止んだように、彼の低い声音だけがはっきりと聞こえて、芽衣は目を見開き頬を染める。秘密めいたやり取りに胸が高鳴った。

「じゃ、後で」

 くるりとこちらに背を向けて、彼は颯爽と去っていった。

 背の高い彼の背中をじっと見つめて、芽衣ははっきりと自覚する。彼に対する特別な想いは、紛れもなく恋なのだ、と。

 久しぶりすぎて、認めるのが少し怖かったけれど、自分は彼を男性として愛している。

 潮の香りがする風が強く吹いて芽衣の髪がさらさらとなびいた。
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