一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
「謝ることじゃないよ。むしろ……いや、なんでもない。そうか……と思っただけだ。だけど、そうだな……じゃあ俺もそのつもりでいる」

 珍しく少し動揺している様子でそう言うのを、芽衣は少し不思議に思う。

 とはいえ『そのつもりでいる』という言葉には安心した。それならば、はじめてのことに、芽衣が少しくらいズレたことを言ったりしても、変に思わないでくれるだろう。

「なにか気をつけることがあったら言ってください。一般的な付き合いはできないって、あまり会えないってことですよね」

「そう。しかもスケジュールもおしえられるものとそうじゃないものがある。基本的には長期航海の時の戻りがいつになるかは話せない」

「わかりました」

 歩きながら、これからの付き合いに関して話す晃輝の声を、芽衣はふわふわした気持ちで聞いていた。

 確かに普通の恋人同士とはまったく違う付き合いになりそうだとは思うけれど、それはうみかぜで働く芽衣にとっては、納得済みの話だ。

「しかも災害や有事の際は変更になって長期間帰ってこられなくなる。とくにこれからの季節は台風が来るから、……変更はしょっちゅうだな」

「台風が?」

「ああ、台風が来ると海が荒れる。艦船が接岸していると船体に傷が付くからそれを避けるために、基地に停泊している艦船は、すべて出航するんだ。休みでも基地に戻らなくてはいけない」

「え……? 出航するんですか? 海が荒れているのに……?」

 ドキッとして芽衣は尋ねる。

 頭の中がスッと冷えて胸の奥がざわざわと騒いだ。台風で海が荒れている中、船を出すなんて信じられない話だった。

「そんなことしたら……沈んじゃうじゃないですか」

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