エリート海上自衛官の最上愛
 さっきまでとは、まったく違う熱くて深くて激しいキスに、芽衣は身を震わせる。普段の紳士的な彼からは想像もできない一面に、求められているのを感じて、芽衣の心が喜びに震えた。
 もう自力で立っているのかすらわからないくらいだった。

「芽衣、大丈夫?」

 問いかけられてゆっくりと目を開くと、芽衣の身体を危なげなく支えて、晃輝が少し心配そうに眉を寄せている。

「だ、大丈夫です……」

 呼吸を整えながら芽衣は答える。いつのまにか唇が離れていたことにすらすぐに気がつけないほど夢中になってしまっていたのだ。頬が熱くてたまらない。今度は完全に彼の腕に身を預けてしまっていた。

 慌てて彼の腕を掴み、体勢を立て直す。
 なんでもしてほしいと思ったとけれど、こんなことで心臓がもつだろうかと、心配になるくらいだ。

「すみませんちょっと、説得力ないですよね……」

 晃輝が目を細めて芽衣の頭を優しく撫でた。

「ゆっくり慣れて。変更がなければ、しばらくは陸にいられるから。こうやって会いにこられる」

 自分を見つめる眼差しに芽衣の胸はときめくけれど、頭の中はスッと冷える。

『変更がなければ』

 幸せな世界に紛れ込むほんの少しの黒い不安。その存在から目を背けるように芽衣はそっと目を伏せた。

「……はい、お待ちしています」
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