エリート海上自衛官の最上愛
 食事をしていたと答えただけなのに、もう芽衣と晃輝が付き合っているのは確定という雰囲気である。でもその後、付き合うことになったのは事実なのだから、否定することもできない。

「やっぱり衣笠さんには敵わないなー」

「当たり前だろ? だからこそ、衣笠さんが戻られるまでが勝負だったのに」

「だけど衣笠さんなら納得だなー」

 もはや芽衣そっちのけで盛り上がる彼らをよそに、直哉が芽衣を低い声で呼んだ。

「おい、芽衣。芽衣……!」

「……なに?」

「なにじゃないだろ。衣笠一尉ってこの前店の前で会ったマスターの息子か? お前、あいつと付き合ってるのか⁉︎」

 直球で尋ねられて、芽衣は気まずい気持ちで頷いた。

「……まあ、そう」

 家族のような存在の彼に彼氏のことを聞かれるのはたまらなく恥ずかしい。とはいえ、隠す理由はなにもない。素直に認めると直哉が険しい表情になった。

「お前なに考えてるんだ⁉︎ あの人海上自衛官なんだろ?」

「そうだよ」

「そうだよ、じゃねえよ」

 厨房にいるマスターと他の客の手前少し抑えてはいるものの、厳しい声で直哉が言う。舌打ちをして、口を開く。

「海上自衛官ってことはだな、普段は……」

 ——そこで。

 ガラガラと店の扉が開く。振り返ると晃輝が暖簾をくぐって入ってくるところだった。さすがに直哉は口を閉じる。

「晃輝さん、おかえりなさい」

 晃輝がにっこりと微笑んだ。

「ただいま」

「今日は早かったんですね」

「ん、まあね。……こんばんは」

 晃輝は、芽衣の隣の直哉に向かって挨拶をする。

 直哉が軽く会釈した。

「衣笠一尉お疲れさまです」

「一尉、お疲れさまです。今日はご報告したいことがございます」

「質問がございます」

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