エリート海上自衛官の最上愛
「気分はどうだ? まだぐらぐらするか?」
部屋へ戻り、ベットに腰掛けた芽衣に、直哉が心配そうに問いかける。キッチンから持ってきたグラスに入った水を差し出した。
「ありがとう直くん」
受け取り、ひと口飲むとほんの少し動悸が収まったようにも思える。けれど、胸の中の不吉な思いはそのままだった。
さっき耳にした誇らしいはずの晃輝の過去の話を、相変わらず怖いと感じてしまっている。コップを持つ手が震えている。
ベッドの脇に立ち芽衣を見下ろして、直哉がため息をついた。
「さっき俺が正気かと聞いた意味がわかったか? あの人は、確かにカッコいいし社会的な地位もあるんだろう。でもお前にとっては、絶対に付き合ってはいけない人だ」
『絶対に付き合ってはいけない人』という言葉が、芽衣の胸を刺した。
「そうだろう? あの人は、いずれまた航海へ出る。お前はその間あの人を待ち続けなくてはならないんだ。お前、そんな付き合いに耐えられるのかよ?」
……耐えられないことは明白だった。
たった今それを思い知ったところなのだ。
彼の過去の職務内容について聞いただけで、こんなことになってしまったのだから。
うつむき芽衣はガラスの中の水を見つめる。どうすればいいかわからなかった。
「だいたいなんでいきなりあの人と付き合うなんてことになったんだ? 出会って二カ月もたってないじゃないか。ったく……だから俺はここで働くことに反対だったんだ。都内のレストランだってお前に合う店はあるよ。こんな海上自衛官ばっかりの店……。横浜市内の求人、一緒に探してやる。住むところも俺がなんとかするから」
直哉からの言葉に、芽衣はすぐに頷けない。簡単に頷けるならば、こんなに動揺していない。
沈黙する芽衣に、直哉がまた深いため息をついた。
部屋へ戻り、ベットに腰掛けた芽衣に、直哉が心配そうに問いかける。キッチンから持ってきたグラスに入った水を差し出した。
「ありがとう直くん」
受け取り、ひと口飲むとほんの少し動悸が収まったようにも思える。けれど、胸の中の不吉な思いはそのままだった。
さっき耳にした誇らしいはずの晃輝の過去の話を、相変わらず怖いと感じてしまっている。コップを持つ手が震えている。
ベッドの脇に立ち芽衣を見下ろして、直哉がため息をついた。
「さっき俺が正気かと聞いた意味がわかったか? あの人は、確かにカッコいいし社会的な地位もあるんだろう。でもお前にとっては、絶対に付き合ってはいけない人だ」
『絶対に付き合ってはいけない人』という言葉が、芽衣の胸を刺した。
「そうだろう? あの人は、いずれまた航海へ出る。お前はその間あの人を待ち続けなくてはならないんだ。お前、そんな付き合いに耐えられるのかよ?」
……耐えられないことは明白だった。
たった今それを思い知ったところなのだ。
彼の過去の職務内容について聞いただけで、こんなことになってしまったのだから。
うつむき芽衣はガラスの中の水を見つめる。どうすればいいかわからなかった。
「だいたいなんでいきなりあの人と付き合うなんてことになったんだ? 出会って二カ月もたってないじゃないか。ったく……だから俺はここで働くことに反対だったんだ。都内のレストランだってお前に合う店はあるよ。こんな海上自衛官ばっかりの店……。横浜市内の求人、一緒に探してやる。住むところも俺がなんとかするから」
直哉からの言葉に、芽衣はすぐに頷けない。簡単に頷けるならば、こんなに動揺していない。
沈黙する芽衣に、直哉がまた深いため息をついた。