エリート海上自衛官の最上愛
「芽衣から聞いていませんか? あいつ、海が苦手なんですよ。怖いんです。恐怖症と言ってもいい」
そのあまりにも意外な内容に、晃輝は目を見開いた。
そんな話は聞いていないし、そんな素ぶりもなかったように思う。
思いあたるそれらしい振る舞いといえば、イベントへの出席を誘われて、困っていたことくらいだが……。
とはいえ直哉がいい加減なことを言っているようにも思えなかった。
「恐怖症? なにか理由があるんですか?」
すると直哉は一瞬躊躇してから、少し低い声を出した。
「あいつの両親、海で亡くなっているんですよ。漁師をしていてある日漁へ出たままそれっきり。……小学三年の時でした。それからあいつは従伯母のもとで育てられたんです」
あまりにも衝撃的な芽衣の過去に、晃輝は絶句する。
だが事情を聞いてようやく晃輝にも、なぜさっき彼女が倒れそうになるまでに動揺したのかを理解した。
海難事故に遭った江口の母親の話が原因だ。冷たい汗が背中を伝った。
「あんまりあいつをからかわないでやってもらえます? あいつ、こういうことにうといから……。慣れてなくて、あんたからしたらちょろい女だったとは思いますが」
「からかってなどいません。俺は真剣な気持ちで彼女と付き合うことに決めたんだ」
晃輝は強く直哉の言葉を遮った。彼女の事情を知らなかったのは確かだが、気まぐれや一時の感情で付き合おうと言ったわけではない。
「なら、なおさらタチが悪い組み合わせだ」
直哉が吐き捨てた。
「そうだろう? 真剣だからなんなんだ? あんたでは芽衣を幸せにできない。これ以上関係を深めても、その先はない。あるのはただ芽衣が苦しむ未来だけだ。……それともあんた、芽衣のためにその仕事を辞められるのかよ」
そのあまりにも意外な内容に、晃輝は目を見開いた。
そんな話は聞いていないし、そんな素ぶりもなかったように思う。
思いあたるそれらしい振る舞いといえば、イベントへの出席を誘われて、困っていたことくらいだが……。
とはいえ直哉がいい加減なことを言っているようにも思えなかった。
「恐怖症? なにか理由があるんですか?」
すると直哉は一瞬躊躇してから、少し低い声を出した。
「あいつの両親、海で亡くなっているんですよ。漁師をしていてある日漁へ出たままそれっきり。……小学三年の時でした。それからあいつは従伯母のもとで育てられたんです」
あまりにも衝撃的な芽衣の過去に、晃輝は絶句する。
だが事情を聞いてようやく晃輝にも、なぜさっき彼女が倒れそうになるまでに動揺したのかを理解した。
海難事故に遭った江口の母親の話が原因だ。冷たい汗が背中を伝った。
「あんまりあいつをからかわないでやってもらえます? あいつ、こういうことにうといから……。慣れてなくて、あんたからしたらちょろい女だったとは思いますが」
「からかってなどいません。俺は真剣な気持ちで彼女と付き合うことに決めたんだ」
晃輝は強く直哉の言葉を遮った。彼女の事情を知らなかったのは確かだが、気まぐれや一時の感情で付き合おうと言ったわけではない。
「なら、なおさらタチが悪い組み合わせだ」
直哉が吐き捨てた。
「そうだろう? 真剣だからなんなんだ? あんたでは芽衣を幸せにできない。これ以上関係を深めても、その先はない。あるのはただ芽衣が苦しむ未来だけだ。……それともあんた、芽衣のためにその仕事を辞められるのかよ」