エリート海上自衛官の最上愛
そういう意味で、彼女をイベントに誘う隊員たちとのやり取りに、思わず口を挟んだのは自分としては誤算だった。しかもその後、本心を口にしてしまったのだから。
場合によっては、もううみかぜへ行けなくなると覚悟したくらいだ。
だがそれに対する意外な彼女の反応に、彼女の方の想いを知り、晃輝は彼女と特別な関係になることを決意したのだ。
うみかぜから晃輝のマンションまでは、晃輝の足で二十分ほど。
自宅に着くと寝室へ向かい、電気もつけず大きなベッドに腰を下ろす。
カーテンを開けっぱなしにしてあった大きな窓の先は横須賀基地。晃輝の母艦ともいうべきいずもが堂々と停泊している。
あの姿を見るたびに自分がどれだけ重い責任を背負っているのかを自覚して身が引き締まる思いになる。
そのためには、自分人生においてある部分を犠牲にするという覚悟を再確認するのだ。
——そう、ほんの少し前までは晃輝はそのつもりだったのだ。
海上自衛官の勤務は変則的で長期で家を空けることが前提だ。
しかも有事の際はそのスケジュールを家族に伝えることすらできなくなる。そして航海中は連絡を取ることもできない。その特殊な勤務体制は、隊員本人というよりは、主に家族や親しい人に負担がかかる。
それを晃輝は身を持って知っている。
母が危篤状態になったにも関わらず海外演習に出ていた父は、すぐに帰ってこられなかったのだから。
当時晃輝はまだ中学二年生。母の死をひとりで受け止めなくてはならなかった時期の記憶は、つらい思い出として心に刻み込まれている。
父を恨んだわけではない。仕方がないことだと知っていた。
それでもどうしてもそばにいてほしかった。
だから晃輝は海上自衛官に入隊した時に決意したのだ。自分は家族を持たないと。上を目指せば目指すほど、自分中でプライベートは二の次になる。
お父さんを恨まないでねと言った母。
それをひとりで受け止めなくてはならなかった自分。
そんな悲しい思いを誰かにさせるくらいなら自分は一生ひとりでいる。
学生時代は、それなりに女性との付き合いはあったが、いつもスケジュールを合わせられず、あまり心を通い合わせることもできないうちに別れることが多かった。
場合によっては、もううみかぜへ行けなくなると覚悟したくらいだ。
だがそれに対する意外な彼女の反応に、彼女の方の想いを知り、晃輝は彼女と特別な関係になることを決意したのだ。
うみかぜから晃輝のマンションまでは、晃輝の足で二十分ほど。
自宅に着くと寝室へ向かい、電気もつけず大きなベッドに腰を下ろす。
カーテンを開けっぱなしにしてあった大きな窓の先は横須賀基地。晃輝の母艦ともいうべきいずもが堂々と停泊している。
あの姿を見るたびに自分がどれだけ重い責任を背負っているのかを自覚して身が引き締まる思いになる。
そのためには、自分人生においてある部分を犠牲にするという覚悟を再確認するのだ。
——そう、ほんの少し前までは晃輝はそのつもりだったのだ。
海上自衛官の勤務は変則的で長期で家を空けることが前提だ。
しかも有事の際はそのスケジュールを家族に伝えることすらできなくなる。そして航海中は連絡を取ることもできない。その特殊な勤務体制は、隊員本人というよりは、主に家族や親しい人に負担がかかる。
それを晃輝は身を持って知っている。
母が危篤状態になったにも関わらず海外演習に出ていた父は、すぐに帰ってこられなかったのだから。
当時晃輝はまだ中学二年生。母の死をひとりで受け止めなくてはならなかった時期の記憶は、つらい思い出として心に刻み込まれている。
父を恨んだわけではない。仕方がないことだと知っていた。
それでもどうしてもそばにいてほしかった。
だから晃輝は海上自衛官に入隊した時に決意したのだ。自分は家族を持たないと。上を目指せば目指すほど、自分中でプライベートは二の次になる。
お父さんを恨まないでねと言った母。
それをひとりで受け止めなくてはならなかった自分。
そんな悲しい思いを誰かにさせるくらいなら自分は一生ひとりでいる。
学生時代は、それなりに女性との付き合いはあったが、いつもスケジュールを合わせられず、あまり心を通い合わせることもできないうちに別れることが多かった。