親愛なる魔王様へ〜The Beast〜
「ね、ねぇ!君も転生者だよね?転生前の名前は望月光!」

その名前に耳がピクリと反応する。その名前で呼ばれるのは何年ぶりだろうか。

「……どうして君たちが前世の僕の名前を知っているの?」

「僕たちも転生者で、前世では君と友達だったからだよ!」

ティムの説明によると、僕たちは本当に友達だったようだ。そして二人は転生する際に神様から僕がこの世界にいること、ルーチェ・クロウディアであることを聞いたらしい。

「お前、あの光なんだろ。光はこんなことする奴じゃねぇ!誰かに無理やりさせられてんだろ?」

アーサーが縋るような目で僕を見る。ティムも真剣な顔をしていた。僕は笑いたくなるのをグッと堪える。前世からの絆を信じているなんて、馬鹿馬鹿しい。

「話はそれだけ?なら、もう行かせてもらうよ」

僕の態度が変わらないことに、二人は心底驚いた様子だった。それを見て今度は堪えきれずに笑ってしまう。

「いいこと教えてあげる。人っていうのはね、簡単にその場の環境に応じて変わっちゃうんだよ。そして人の絆ほど脆いものはない」
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