親愛なる魔王様へ〜The Beast〜
人も人との繋がりなど、魔族と魔族の繋がりに比べたら大したことはない。人は約束を交わす時には何の痛みも伴わない口約束。でも魔族は敗れた死ぬ誓いを立てる。だからクラル様たちは結束力が強い。

「やめてよ、光!!」

ティムが叫ぶ。アーサーが剣を構える。僕の心には何も響かない。ただ目の前でつまらない舞台でも見ているような気分だ。

二人の言葉に嘘はないんだろうな。でも残念ながら、僕には二人との思い出はおろか、前世の二人の名前すら出てこないんだ。

「さよなら」

魔法が放たれる。僕の目の前が紫の光に包まれた。



破壊が全て終わった後、僕は集合場所に向かって飛んだ。浮遊魔法を使ってたどり着いたのは、町に唯一ある大きな教会の屋根の上だ。その教会も僕とクラル様の魔法のおかげで今は廃墟同然の状態になっている。

「クラル様」

先に到着していたクラル様に声をかける。クラル様が見下ろす先には黒煙と炎が立ち込め、町は平穏という言葉とは程遠い状態だ。

「ルーチェ、よくやったね」
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