親愛なる魔王様へ〜The Beast〜
クラル様が僕の頰を撫でる。胸が高鳴った。僕は目を逸らしながら言う。

「クラル様の、ディスペア家のお役に立つことが、僕の唯一の使命ですから」

「そう……」

クラル様は僕の腰に腕を唐突に回した。そのまま浮遊魔法で二人で空に浮き上がる。どんどん地面が遠くなって、町はただ真っ赤に染まっているようにしか見えないくらいの高さになった時、ようやく浮き上がるのが止まった。

「クラル様……」

戸惑う僕を抱き締めて、クラル様はとても優しい声で言った。

「愛してるよ、ルーチェ。これからもずっとそばにいて」

「もちろんです、クラル様」

僕はクラル様の背中に腕を回す。頭の中に初めて会った日のことがふと浮かんだ。

何があっても僕はクラル様のものだ。例え、僕という人生の物語の結末がバッドエンドだったとしても、クラル様がいるならばいい。

大きな月が輝く中、僕とクラル様の距離がゼロになった。





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