親愛なる魔王様へ〜The Beast〜

「ルーチェ、今いいかい？」

ドアがノックされてクラル様が部屋に入って来る。本を読んでいた僕は姿勢を正し、クラル様の前に立つ。

「はい。何でしょうか？」

「父様がそろそろルーチェを任務に連れて行くようにって言っていたよ。作戦会議、一緒に行こう」

「本当ですか！？」

僕の胸の中に嬉しさが込み上げてくる。思わずニヤついてしまうほどだ。嬉しい。僕が任務に参加できるなんて……！

任務というのは、魔王の悲願である世界征服のために国や街を襲うこと。僕は今まで魔法の訓練こそしていたけど、任務には参加させてもらえず、作戦会議にすら参加することができなかった。ようやく参加できるんだ……！

「ルーチェ、ずっと訓練頑張っていたもんね」

「とても嬉しいです！」

クラル様が笑う。成長して大人になったクラル様は、初めて会った時よりも美しい人になった。その笑顔を見るたびに、僕の胸の中には緊張や様々な感情が走る。

「ルーチェ、どうしたの？」