親愛なる魔王様へ〜The Beast〜
クロード様が怒っているわけではないようでホッとした。しかしクロード様は何も言わない。部屋は静まり返っている。

「父様、初任務は近場がいいでしょう。この森を抜けた先にあるカラミティはどうですか?」

クラル様が提案する。クロード様は少し考えた後、「そうだな」と頷いた。

「クラル、ルーチェをサポートするように。ルーチェはクラルに色々教えてもらいなさい」

「はい」

僕とクラルさんは同時に返事をする。そして顔を見合わせて微笑んだ。クラルさんの笑った顔はまるで咲き誇る花のように綺麗だ。……こんな綺麗で実力のある人の足手纏いにならないだろうか。不安が押し寄せてくる。

「俺が一緒だから大丈夫だよ」

まるで僕の心の中を読んだみたいにクラルさんが言う。うまくできるかなんてわからないのに、クラルさんのその一言で強張った体がほぐれていくので、不思議なものである。

「精一杯頑張ります」

クロード様、ノア様、そしてクラル様に僕は誓う。あの日拾われてから僕の全てはディスペア家のものだ。
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