人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
『エドワード王太子のお隣のあなたは? ただの通訳ではないようですが?』
『私はエドワード殿下の婚約者で、リズベルト王国の第一王女アリシア・リズベルトと申します。今日はエドワード殿下の通訳を務めさせて頂いています』
『リズベルト王国の王女ですか。両国が同盟を結んだという話は耳にしておりましたが、なるほど王族同士の婚姻まで結ばれるのですね。それにしてもアリシア王女はとても流暢なタンガル語ですね。どこで学ばれたのです?』
『リズベルト王国に移住して来た者に教えてもらいました』
『もしやと思いますが、ゼンケル商会の者ではないですか?』
『えっ! その通りです! ヨダニール王子は彼女とお知り合いなのですか⁉︎』
『ええ。ゼンケル商会は王家御用達の商会で懇意にしていましたから。リズベルト王国に移住する者は少ないですからね、もしかしてと思ったのですがまさかでした。驚きましたね』
『ええ、本当に驚きました。不思議なご縁ですね!』
「おい、なんだ。何の話をしている? 通訳してくれねば分からないではないか」
エドワード殿下に不満気に催促され、そこで私はハッとする。
ヨダニール王子から私への質問が続いたため、咄嗟に答えてしまっていてすっかり通訳するのを失念していた。
私は慌てて今の会話をかいつまんでエドワード殿下に伝える。
その後はあまりでしゃばり過ぎないように、ひたすら通訳に徹したのだが、どうやらヨダニール王子は私に興味を持ってしまったらしい。
予定されていたエドワード殿下とヨダニール王子の会談が終わった後、リズベルト王国のことを知りたいからという理由で私個人との面会希望の申し出があった。
丁重にもてなす相手からの申し出を断る理由もなく、翌日にエドワード殿下抜きで面会することになった。
場所は王宮本殿の庭園を一望できる見晴らしの良い部屋のテラスだ。
私自身も初めて足を踏み入れる場だったのだが、要人を接遇するための貴賓室だという。
ヨダニール殿下と接するにあたり、王宮勤めの高官が手配してくれたらしい。
『このたびはわざわざ時間をとって頂きありがとうございます、アリシア王女』
『とんでもありません。私もタンガル帝国の方と接する機会はありませんでしたので光栄です』
他国の王族を前に緊張しながら、私の侍女たちがティーカップに紅茶を注いでくれる。
その香り高い紅茶を味わいながら、今日は通訳なしで私とヨダニール王子は会話を始めた。
『昨日は聞きそびれてしまったのですが、アリシア王女はいつもそのベールを?』
『はい。私の国では王族は婚姻するまで人に顔を見せないことを良しとする古い文化があるのです。もっとも古過ぎて今や廃れてしまっていますが。ただ、私はその古い文化を大切にしたいと思っていて実践しているのです』
『なんと……! アリシア王女は古い文化や伝統にとても理解のある方なのですね。素晴らしいお考えだと思います』
完全に嘘話なのをヨダニール王子に話すのは躊躇われたが、聞かれた以上この話を突き通すしかない。
どうせあと半年くらいの話なのだと割り切り、私は至って真面目に嘘を語った。
これに大変感心されてしまい、若干胸が痛む。
『私はエドワード殿下の婚約者で、リズベルト王国の第一王女アリシア・リズベルトと申します。今日はエドワード殿下の通訳を務めさせて頂いています』
『リズベルト王国の王女ですか。両国が同盟を結んだという話は耳にしておりましたが、なるほど王族同士の婚姻まで結ばれるのですね。それにしてもアリシア王女はとても流暢なタンガル語ですね。どこで学ばれたのです?』
『リズベルト王国に移住して来た者に教えてもらいました』
『もしやと思いますが、ゼンケル商会の者ではないですか?』
『えっ! その通りです! ヨダニール王子は彼女とお知り合いなのですか⁉︎』
『ええ。ゼンケル商会は王家御用達の商会で懇意にしていましたから。リズベルト王国に移住する者は少ないですからね、もしかしてと思ったのですがまさかでした。驚きましたね』
『ええ、本当に驚きました。不思議なご縁ですね!』
「おい、なんだ。何の話をしている? 通訳してくれねば分からないではないか」
エドワード殿下に不満気に催促され、そこで私はハッとする。
ヨダニール王子から私への質問が続いたため、咄嗟に答えてしまっていてすっかり通訳するのを失念していた。
私は慌てて今の会話をかいつまんでエドワード殿下に伝える。
その後はあまりでしゃばり過ぎないように、ひたすら通訳に徹したのだが、どうやらヨダニール王子は私に興味を持ってしまったらしい。
予定されていたエドワード殿下とヨダニール王子の会談が終わった後、リズベルト王国のことを知りたいからという理由で私個人との面会希望の申し出があった。
丁重にもてなす相手からの申し出を断る理由もなく、翌日にエドワード殿下抜きで面会することになった。
場所は王宮本殿の庭園を一望できる見晴らしの良い部屋のテラスだ。
私自身も初めて足を踏み入れる場だったのだが、要人を接遇するための貴賓室だという。
ヨダニール殿下と接するにあたり、王宮勤めの高官が手配してくれたらしい。
『このたびはわざわざ時間をとって頂きありがとうございます、アリシア王女』
『とんでもありません。私もタンガル帝国の方と接する機会はありませんでしたので光栄です』
他国の王族を前に緊張しながら、私の侍女たちがティーカップに紅茶を注いでくれる。
その香り高い紅茶を味わいながら、今日は通訳なしで私とヨダニール王子は会話を始めた。
『昨日は聞きそびれてしまったのですが、アリシア王女はいつもそのベールを?』
『はい。私の国では王族は婚姻するまで人に顔を見せないことを良しとする古い文化があるのです。もっとも古過ぎて今や廃れてしまっていますが。ただ、私はその古い文化を大切にしたいと思っていて実践しているのです』
『なんと……! アリシア王女は古い文化や伝統にとても理解のある方なのですね。素晴らしいお考えだと思います』
完全に嘘話なのをヨダニール王子に話すのは躊躇われたが、聞かれた以上この話を突き通すしかない。
どうせあと半年くらいの話なのだと割り切り、私は至って真面目に嘘を語った。
これに大変感心されてしまい、若干胸が痛む。