人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
『我が国も文化や伝統は大切にしています。このターバンを巻く姿もそうです。タンガル帝国のような暑い国でターバンを巻くのは暑くないのかと他国からは訝しがられます。自国の者の中でも嫌がる者も若い世代には増えてきました。ですが、暑い国だからこそでして、強い日差しや風雨、砂塵などから頭部を守る目的で巻いているのです』
『そうなのですね。確かに一見不思議なこともきちんと理由があるものですよね』
『ええ、文化や伝統というのは長い年月の間で当初の目的や理由が捻じ曲げて伝わり廃れてしまうことも多いものです』
前世の日本でもこういったことはよくあった。
若い世代が離れて行くことで担い手がいなくなり、長年築かれたものが廃れてしまうと確かテレビでも特集されていた気がする。
そんなことをなんとなく思い出しながら私はヨダニール王子の話に応じる。
『アリシア王女の国でのベールも同じでしょう。廃れつつあるとのことですが、だからこそそれを大切にされるお心に大変共感いたします』
『若い世代が文化や伝統を体感してみれば、その良さはきっと実体験として分かるんでしょうけどね。その良さを誇れると素敵ですよね。文化や伝統を重んじながらも、時には現代流にアレンジしてみたりして親しみやすくするのもいいですよね』
『ええ、ええ! 本当にその通りです! さすが素晴らしいお考えをお持ちですね!』
なにやら大変良いように解釈してくださったようで、なんだか私が志の高い崇高な人間にされてしまっている。
ヨダニール王子には感動したというような輝く目を向けられてしまった。
ベールのことはただのハッタリの嘘であり、前世で見たテレビの感想をなんとなく述べたに過ぎないのに……と思うと申し訳なくて滝汗をかいてしまいそうだ。
『大変感銘を受けました。私と志を同じくするアリシア王女には友好の証としてこちらをお渡しさせてください。これは我が国で最高級のターバンを作る時の生地です。よろしければ、ぜひこの生地でベールやドレスをお作りください。きっと美しいモノが仕上がるでしょう』
ヨダニール王子の付き人経由で渡された生地に手を触れると、びっくりするくらい滑らかで柔らかい手触りだった。
これが最高級品だということは一目瞭然だ。
『こんな高級なもの頂けません。お返しできるものもないですし……』
『私からの友好の証ですから見返りは求めませんよ。いつかアリシア王女には我が国に来て、我が国の文化と伝統を体感頂きたい。その時にぜひこの生地をお召しください』
どうやらヨダニール王子はともかく自国の伝統を誇りに思っていて、それを認められたことが嬉しいらしい。
実際に見て欲しいと言い出すほどだ。
この生地も文化や伝統の一端なのだろうから、それを私に体験して欲しいのだろう。
そう解釈した私は純粋な思いを無下にもできず、言葉通りありがたく受け取ることにした。
だが、私とヨダニール王子がそんなやりとりをしている背後で、控えていたユルラシア王国の高官たちが驚きながら密かに騒めいているのを私は全く気づいていなかった。
『そうなのですね。確かに一見不思議なこともきちんと理由があるものですよね』
『ええ、文化や伝統というのは長い年月の間で当初の目的や理由が捻じ曲げて伝わり廃れてしまうことも多いものです』
前世の日本でもこういったことはよくあった。
若い世代が離れて行くことで担い手がいなくなり、長年築かれたものが廃れてしまうと確かテレビでも特集されていた気がする。
そんなことをなんとなく思い出しながら私はヨダニール王子の話に応じる。
『アリシア王女の国でのベールも同じでしょう。廃れつつあるとのことですが、だからこそそれを大切にされるお心に大変共感いたします』
『若い世代が文化や伝統を体感してみれば、その良さはきっと実体験として分かるんでしょうけどね。その良さを誇れると素敵ですよね。文化や伝統を重んじながらも、時には現代流にアレンジしてみたりして親しみやすくするのもいいですよね』
『ええ、ええ! 本当にその通りです! さすが素晴らしいお考えをお持ちですね!』
なにやら大変良いように解釈してくださったようで、なんだか私が志の高い崇高な人間にされてしまっている。
ヨダニール王子には感動したというような輝く目を向けられてしまった。
ベールのことはただのハッタリの嘘であり、前世で見たテレビの感想をなんとなく述べたに過ぎないのに……と思うと申し訳なくて滝汗をかいてしまいそうだ。
『大変感銘を受けました。私と志を同じくするアリシア王女には友好の証としてこちらをお渡しさせてください。これは我が国で最高級のターバンを作る時の生地です。よろしければ、ぜひこの生地でベールやドレスをお作りください。きっと美しいモノが仕上がるでしょう』
ヨダニール王子の付き人経由で渡された生地に手を触れると、びっくりするくらい滑らかで柔らかい手触りだった。
これが最高級品だということは一目瞭然だ。
『こんな高級なもの頂けません。お返しできるものもないですし……』
『私からの友好の証ですから見返りは求めませんよ。いつかアリシア王女には我が国に来て、我が国の文化と伝統を体感頂きたい。その時にぜひこの生地をお召しください』
どうやらヨダニール王子はともかく自国の伝統を誇りに思っていて、それを認められたことが嬉しいらしい。
実際に見て欲しいと言い出すほどだ。
この生地も文化や伝統の一端なのだろうから、それを私に体験して欲しいのだろう。
そう解釈した私は純粋な思いを無下にもできず、言葉通りありがたく受け取ることにした。
だが、私とヨダニール王子がそんなやりとりをしている背後で、控えていたユルラシア王国の高官たちが驚きながら密かに騒めいているのを私は全く気づいていなかった。