人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「……今日はその件で一言お伝えしておこうと思いましてお茶会にお招きしたのですわ」

「あら、なにかしら?」

一段と声を低くしたマティルデ様を前にしながら、私はティーカップを口に運び紅茶を飲む。

これからたぶん聞いていて面白い話をされるわけではないだろうから、その前に美味しい紅茶で心を和ませておきたかった。

「アリシア様は通訳を務められ、しかもタンガル帝国の王子から友好の証まで贈られたとか。本当ですの?」

「ええ。なりゆきではあるけど、それは事実ね」

「ずいぶん王宮内で話題になってるみたいですわね。アリシア様を褒めるような声も多いと耳にしますわ」

「私は部屋に引き籠っているから詳しくは知らないけれど、それが本当ならありがたいことではあるわね」

「……少しご活躍なさったからって調子に乗らないで頂けますこと? エドワード様の関心を引けたからって寵愛がアリシア様へ向くわけではございませんのよ? エドワード様は今も私の離宮でお休みなのですから」

「えっ、エドワード殿下の関心?」

調子に乗るなというのは予想していたセリフだったからなんとも思わなかったのだが、それに続いて放たれた言葉は思わぬものだった。

驚きから自然と復唱してしまい、それにマティルデ様はさらに不快そうに眉を顰めた。

「ご自分がタンガル語が話せるところをエドワード様の目の前で披露して関心を引こうとされたのでしょう? それにタンガル帝国との友好を築いた功績で役に立つことも見せつけることに成功されましたものね。すべては見向きもされないエドワード様から寵愛を得るためのことと分かっていましてよ?」

 ……えっ、私の行動、そんなふうに周囲からは見えているの⁉︎

1ミリもそんな気はなかったから、指摘されて本当に衝撃を受けた私は絶句してしまった。

口を開けずにいると、マティルデ様は我が意を得たりというふうに、さらに言葉を紡ぐ。

「ええ、アリシア様のその目論見は成功かもしれませんわね。エドワード様はアリシア様に少し興味を引かれたご様子でしたもの。でもそれはただ単に役に立つ女だと思われただけですのよ。私のように女として愛されるのとは訳が違いますわ。それを勘違いしないで頂けます?」

 ……ええっ、それで実際エドワード殿下が私に興味を引かれたですって⁉︎

マティルデ様の言うことはいちいち私に驚きの情報をもたらした。

だからビックリして言葉を失ってしまう。
< 106 / 163 >

この作品をシェア

pagetop