人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「エドワード様が毎年楽しみにされている舞踏会だから、今年も気合い入ってそうだね。昨年はマティルデ様のエスコートをされていたけど、今年はエドワード様どうされるつもりだろう? さすがにこの舞踏会はアリシア王女殿下にも出席してもらうだろうし、そうなれば身分的にマティルデ様よりアリシア王女殿下を優先する形になると思うけど……」

アランが何を言いたいのかはすぐに察しがついた。

いかにもエドワード様が不満を述べそうな内容だった。

アランの懸念はもっともだと思い、念のため舞踏会関連を取り仕切っている担当高官に確認したところすでに手を打ってあるとのことだ。

例年はマティルデ様をエスコートしてエドワード様も会場入りしてくるのだが、今年は入場をなしにして上座に予め座っておいて頂くそうだ。

エドワード様を真ん中にアリシア様とマティルデ様で挟むように椅子を配置し、身分的な配慮と寵愛具合の配慮を兼ね合わせた形にするらしい。

席を立ってダンスフロアへ赴く際のエスコートはその場に応じてになるという。

 ……その状況だと、アリシア様はきっとその場にずっと座っているだけになるのだろうな。

エドワード様がアリシア様に気遣うことなく、マティルデ様を連れてダンスフロアへ赴く姿がありありと想像できる。

そしてその2人の姿を、悲しむでもなく、当たり前のように穏やかに眺めるアリシア様の姿も同時に脳裏に思い浮かんだ。


そして舞踏会当日ーー。

いつも以上気合を入れて着飾った貴族たちが王宮の大広間に一同に集まった。

ダンスに興じる者、食事に夢中な者、お酒でほろ酔いになっている者など様々だが、一番はやはり貴族同士での情報交換に勤しむ者が多い。

ほぼ全貴族が集まるこの舞踏会は、有力者と顔繋ぎをしたり、縁談相手を見つけたりと、社交にもってこいの場だ。

私のところにもさっきから有象無象の貴族が擦り寄るようにやってくる。

その多くはなんとか公爵家と縁を結ぼうとする貴族からの縁談ばかりだ。

年頃の娘を連れて挨拶に来て、遠回しに、時には直接的にアピールされる。

どの令嬢もシナを作り、媚びるような目で私を見つめてくるのだが、強欲な野望が透けて見えて辟易とした。

やはり私の女嫌いは全く治っていないのだと改めて実感したくらいだった。
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