人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「おい、見たか? 例の隣国の王女殿下」
「ああ、噂通りベールで顔を隠していたな」
その時、近くにいた貴族たちの会話がふと耳に飛び込んできた。
話題はアリシア様のことだった。
「王宮勤めの者に聞いたところ、我儘で性格が歪んでいるという当初の噂はデマのようで、容姿は醜いが聡明で役に立つ女性らしいぞ」
「私も先程その話は耳にした。なんでもタンガル帝国の王子が来国した時に活躍したとか」
「らしいな。たが、エドワード様の寵愛は依然としてマティルデ様の独占だそうだ。王女には全く関心がないようだな」
「となると、正式に婚姻した後はお飾り妃で、子をなすのはやはりマティルデ様が有力だな。マティルデ様の関係者と縁を結んでおく方が良さそうだ」
実のところ、今日はこのような会話が至るところで繰り広げられていた。
というのも、アリシア様がこのように貴族の前に姿を現すのは初めてのことで、全貴族の注目が集まっているからだ。
先日のタンガル帝国の件で王宮勤めの者は見たことがあったり、話を聞いていたりしても、それ以外の貴族はアリシア様についてほぼ情報を得ていない。
近くこの国の王太子妃となるアリシア様の存在は今後の権力争いの動向に大きく影響する。
それゆえ、どういう人物なのか、エドワード様との関係はどうなのかなど、皆が口々に探り合っていた。
「おい、上座の方を見てみろ。やはりエドワード様はマティルデ様にご執心のようだな。あの様子を見ていれば王女に一切興味がないのがよく分かる」
聞こえてきた言葉に釣られて、私も王族が座る上座に視線を移すと、まさに私が先日思い浮かべた場面が繰り広げられていた。
つまり、エドワード様がアリシア様に気遣うことなく、マティルデ様をエスコートしてダンスフロアへ赴くところだった。
ダンスフロアに降り立った2人は、貴族たちの注目を一身に浴びながら、実に仲睦まじく体を密着させて踊り出す。
その姿を見れば、エドワード様がマティルデ様を寵愛しているのは一目瞭然だった。
これを目にした貴族たちがこぞってコソコソと囁き合う。
――「マティルデ様はなんてお美しいのでしょう」
――「エドワード様と並ぶととてもお似合いだわ」
――「それに比べてアリシア様は王女という身分だけしか価値がない方のようですわね」
――「ベールの下は大層醜いみたいですもの。お可哀想だこと」
――「いくら正妃になっても全く愛されないお飾り妃なんてお辛いでしょうね」
――「きっと子も望めないでしょうね。女として同情してしまいますわ」
可哀想だ、辛そうだと一見心配しているような言葉を紡ぎつつ、クスクスと笑う貴族たちは、完全にアリシア様を馬鹿にするように嘲笑っていた。
「ああ、噂通りベールで顔を隠していたな」
その時、近くにいた貴族たちの会話がふと耳に飛び込んできた。
話題はアリシア様のことだった。
「王宮勤めの者に聞いたところ、我儘で性格が歪んでいるという当初の噂はデマのようで、容姿は醜いが聡明で役に立つ女性らしいぞ」
「私も先程その話は耳にした。なんでもタンガル帝国の王子が来国した時に活躍したとか」
「らしいな。たが、エドワード様の寵愛は依然としてマティルデ様の独占だそうだ。王女には全く関心がないようだな」
「となると、正式に婚姻した後はお飾り妃で、子をなすのはやはりマティルデ様が有力だな。マティルデ様の関係者と縁を結んでおく方が良さそうだ」
実のところ、今日はこのような会話が至るところで繰り広げられていた。
というのも、アリシア様がこのように貴族の前に姿を現すのは初めてのことで、全貴族の注目が集まっているからだ。
先日のタンガル帝国の件で王宮勤めの者は見たことがあったり、話を聞いていたりしても、それ以外の貴族はアリシア様についてほぼ情報を得ていない。
近くこの国の王太子妃となるアリシア様の存在は今後の権力争いの動向に大きく影響する。
それゆえ、どういう人物なのか、エドワード様との関係はどうなのかなど、皆が口々に探り合っていた。
「おい、上座の方を見てみろ。やはりエドワード様はマティルデ様にご執心のようだな。あの様子を見ていれば王女に一切興味がないのがよく分かる」
聞こえてきた言葉に釣られて、私も王族が座る上座に視線を移すと、まさに私が先日思い浮かべた場面が繰り広げられていた。
つまり、エドワード様がアリシア様に気遣うことなく、マティルデ様をエスコートしてダンスフロアへ赴くところだった。
ダンスフロアに降り立った2人は、貴族たちの注目を一身に浴びながら、実に仲睦まじく体を密着させて踊り出す。
その姿を見れば、エドワード様がマティルデ様を寵愛しているのは一目瞭然だった。
これを目にした貴族たちがこぞってコソコソと囁き合う。
――「マティルデ様はなんてお美しいのでしょう」
――「エドワード様と並ぶととてもお似合いだわ」
――「それに比べてアリシア様は王女という身分だけしか価値がない方のようですわね」
――「ベールの下は大層醜いみたいですもの。お可哀想だこと」
――「いくら正妃になっても全く愛されないお飾り妃なんてお辛いでしょうね」
――「きっと子も望めないでしょうね。女として同情してしまいますわ」
可哀想だ、辛そうだと一見心配しているような言葉を紡ぎつつ、クスクスと笑う貴族たちは、完全にアリシア様を馬鹿にするように嘲笑っていた。