人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「すでにブライトウェル公爵の耳にも入っておりますことでしょう。私が発起人となり、王家に反感を持つ者は反乱を企てております」
「……それをなぜ私に今言う? 私は王太子殿下の側近なのだが?」
「もちろん存じておりますとも。ですが、私は確信を持ちました。ブライトウェル公爵も思うところがあられるのだと」
「…………」
「それに私ども反乱を企てる者は別に国に混乱をもたらしたいわけではありませんぞ。むしろその逆ですな。この国のために立ち上がるのです。その点においても、ブライトウェル公爵が私どもに付いてくだされば円滑だと思っています」
「……円滑、か」
「そうですとも。なにしろブライトウェル公爵は王位継承権第2位のお方。しかも数々の実績もおありで、周囲からの信望も絶大。反乱が成功したのち、王位につくのがブライトウェル公爵であれば誰も文句を言わないでしょうな。正当な継承者であられるのだから国が大きく乱れることもないでしょうぞ」
……つまりノランド辺境伯は、私を旗頭にしたいわけか。
ただ王家に反感を持って闇雲に王位を簒奪するのではなく、その後のことまで考えているようだ。
確かにノランド辺境伯の言う通り、私を旗頭とすらなら摩擦は少ないであろう。
なかなかにしたたかな企てをしたうえでの、私への接触だったことが窺えた。
「どうですかな? 考えてくださいませんかな?」
「…………」
「もちろん今すぐに回答を得たいわけではありません。ただ、残念ながら時間はそれほどないのです。王太子殿下がアリシア王女殿下と正式に婚姻されれば、隣国も絡んだ問題になってきますしな。ですから、あと数ヶ月で行動しなくてはなりませんゆえ、1ヶ月以内にはお答えをお聞かせ願いたい。良い回答を期待しておりますぞ。では私は今日はここで失礼いたします」
ノランド辺境伯は、自分より身分が高い私に一礼すると、その場を音もなく去って行った。
残された私は今聞かされたことを反芻する。
以前の私なら全く相手にしなかった話だ。
むしろこのような決定的な企みを耳にしたからには、そのままノランド辺境伯を去らせるなんてことはしなかっただろう。
だというのに、この時の私はいつもとは違っていた――心が揺れ動いていたのだ。
……アリシア様が正式に婚姻される前までのあと数ヶ月以内に、か。
脳裏に思い浮かぶのは、何も望まず自分の希望も述べない無欲なアリシア様の笑顔だ。
私は思わずチラリと考えてしまったのだ。
もしこの話に乗れば、アリシア様を私のモノにすることができるのではないだろうか、そして自らの手で幸せにして差し上げられるのではないか――と。
それは王族に仕える臣下として、エドワード殿下の側近として、非常に罪深く邪な考えだった。
「……それをなぜ私に今言う? 私は王太子殿下の側近なのだが?」
「もちろん存じておりますとも。ですが、私は確信を持ちました。ブライトウェル公爵も思うところがあられるのだと」
「…………」
「それに私ども反乱を企てる者は別に国に混乱をもたらしたいわけではありませんぞ。むしろその逆ですな。この国のために立ち上がるのです。その点においても、ブライトウェル公爵が私どもに付いてくだされば円滑だと思っています」
「……円滑、か」
「そうですとも。なにしろブライトウェル公爵は王位継承権第2位のお方。しかも数々の実績もおありで、周囲からの信望も絶大。反乱が成功したのち、王位につくのがブライトウェル公爵であれば誰も文句を言わないでしょうな。正当な継承者であられるのだから国が大きく乱れることもないでしょうぞ」
……つまりノランド辺境伯は、私を旗頭にしたいわけか。
ただ王家に反感を持って闇雲に王位を簒奪するのではなく、その後のことまで考えているようだ。
確かにノランド辺境伯の言う通り、私を旗頭とすらなら摩擦は少ないであろう。
なかなかにしたたかな企てをしたうえでの、私への接触だったことが窺えた。
「どうですかな? 考えてくださいませんかな?」
「…………」
「もちろん今すぐに回答を得たいわけではありません。ただ、残念ながら時間はそれほどないのです。王太子殿下がアリシア王女殿下と正式に婚姻されれば、隣国も絡んだ問題になってきますしな。ですから、あと数ヶ月で行動しなくてはなりませんゆえ、1ヶ月以内にはお答えをお聞かせ願いたい。良い回答を期待しておりますぞ。では私は今日はここで失礼いたします」
ノランド辺境伯は、自分より身分が高い私に一礼すると、その場を音もなく去って行った。
残された私は今聞かされたことを反芻する。
以前の私なら全く相手にしなかった話だ。
むしろこのような決定的な企みを耳にしたからには、そのままノランド辺境伯を去らせるなんてことはしなかっただろう。
だというのに、この時の私はいつもとは違っていた――心が揺れ動いていたのだ。
……アリシア様が正式に婚姻される前までのあと数ヶ月以内に、か。
脳裏に思い浮かぶのは、何も望まず自分の希望も述べない無欲なアリシア様の笑顔だ。
私は思わずチラリと考えてしまったのだ。
もしこの話に乗れば、アリシア様を私のモノにすることができるのではないだろうか、そして自らの手で幸せにして差し上げられるのではないか――と。
それは王族に仕える臣下として、エドワード殿下の側近として、非常に罪深く邪な考えだった。