人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「ロ、ロイド……反乱と聞こえたけど、聞き間違いだよね?」

「いや、聞き間違いではない。そう言ったからな。ノランド辺境伯に誘われて(くみ)することに決めた」

「ほ、本気⁉︎ まさかロイドが……⁉︎ この前までは一緒に手を打たなければって話し合ってたのに。その決断をした背景を聞いてもいい? ノランド辺境伯がよっぽど巧みに誘ってきたの?」

アランが疑問に思うのはもっともだった。

私は自分がアリシア様に想いを寄せていることも含めてありのままを打ち明けることにした。

「アランの言う通り、当初は全く反乱に加わるつもりはなかった。だからノランド辺境伯が接触して来ようとするのも全部無視していた。だが、私自身の事情が変わったんだ。そしてそのためには反乱に与するのが合理的だと考えた」

「ロイドの事情……?」

「アリシア様に懸想(けそう)した。あの方をなんとしてでも幸せにして差し上げたいと思ったんだ」

「ええっ⁉︎ あの女嫌いのロイドが女性に好意を持ったの⁉︎ しかもアリシア王女殿下⁉︎ ああ、だから舞踏会の時にダンスを踊ったのか……!」

腑に落ちたというような顔をしたアランに私は肯定の意味で頷く。

そしてノランド辺境伯が私を旗頭として王位簒奪の反乱を考えていること、隣国も絡む問題のためその期限はエドワード様とアリシア様の婚姻までに決行となることを話した。

「なるほど。確かに反乱の後にロイドが王位に就くのなら国に大きな混乱はもたらさないだろうね。むしろ陛下の先が長くない現状において、王族としての自覚や責任がないエドワード様のことを重々知っているから、その方が国のためになるとさえ感じるね。いや、もうそれしか手はないのかもしれない。それにロイドが国王になれば、エドワード様とアリシア王女殿下の婚姻も止められるだろうし」

「あとは、陛下のご容態が悪く先が長くないことも決断する後押しになったんだ。私も叔父である陛下のことは敬愛している。陛下が築いて来られたこの国を、このままエドワード様に任せておくと破綻する未来しか見えない……」

「それには深く同意するよ。さっきも話した通り、つい先日僕もそれを改めて実感したばかりだから」

そこまで話すとアランは考え込むように顔を伏せて無言になった。

そしてしばらくして再び顔を上げると私を真摯な目で見据える。

その瞳には決意の色が浮かんでいた。

「分かった。僕もその計画に加わるよ。ロイドに手を貸す」

「誘っておいてなんだが、侯爵家のことはいいのか……?」

「父上はもともとエドワード様には不信感を持っていて、この前の舞踏会での振る舞いを見てより一層それが深まったらしいんだよね。ほら、アリシア王女殿下をかなり蔑ろにしてたでしょ? いくら愛情がなくても隣国の王女に対してどうなのかって言ってたよ。だから理解を得られると思うんだ」
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