人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
よくよく聞けば、アランの婚約者であるミランダ嬢の家である伯爵家はノランド辺境伯の遠縁にあたるらしい。

伯爵家は反乱に与しているという噂はないが、アランは前から疑いを持っていたそうで、可能性が高いと最近感じていたらしい。

「そういう意味でも、ミランダと僕が婚姻するためには同じ側にいた方が家同士の関係としても良いと思うんだよね。だから計画に加わるのは自分のためでもあるんだ」

「そうなのか。理由はなにあれ私としてはアランに力を貸してもらえるのは助かる」

そこから反乱に関する具体的な話を共有する。

決断した直後に、家令のバーナードをはじめとしたブライトウェル公爵家の臣下たちにも私の考えは伝えてあった。

そのうえで、すでにノランド辺境伯へは反乱に加わる旨を返答している。

そのため数日後に反乱軍の主要人物たちと会合をする予定があり、そこにアランも参加することで話がまとまった。

「ちなみにさ、ロイドって今もエドワード様から任を受けてアリシア王女殿下のもとへ訪問してるの?」

「実は以前にエドワード様にもうその任はナシだと言い渡された。……だが聞かなかったことにしている」

「へぇ〜ロイドでも自分の気持ち優先しちゃうことあるんだね! なんか人間らしくなったねロイド。たださ、しばらくその訪問も控えた方がいいんじゃない? それこそ反乱が成功するまでは」

意外なことを言われて私は目を瞬く。

これまで通りに3日に1回訪問するつもりでいたからだ。

「舞踏会でアリシア王女殿下とロイドが踊ったことで注目浴びたでしょ? そんな中で定期的に訪問していたら、実は恋仲なんじゃないかと疑ってかかる貴族も出てくるかもしれないよね。そうなると面倒なことになりそうじゃない?」

確かにアランの言うことはもっともだった。

婚約者のいるアリシア様が不貞を働いていたと不名誉な噂が流れるかもしれないし、私の気持ちが露呈して弱味を握られることになるかもしれない。

ただでさえ水面下で反乱を企てている中、余計な注目を集めてしまうのは悪手だろう。

 ……それに私も自分の行動が制御できないかもしれないしな。

バラ祭りに出掛けた日に、平民流のエスコートだと称してアリシア様の手を繋いだことや、スカートに口づけを落としたことは記憶に新しい。

あの時も本当は抱き寄せて、頬や唇に口づけをしたい衝動を必死に抑えたのだ。

アリシア様も同じ想いでいてくれると分かった今、扉を開けているとはいえ部屋の中で2人きりでいれば、そのような行動を起こしてしまいかねない懸念はある。

「アランの言う通りだな。反乱が成るまでは訪問は控えることにする……」

アリシア様の顔を見たり、声を聞いていたりできなくなると思うと、想像するだけで苦しさが込み上げてくる。

だが、これも願いを叶えるためには仕方ないことだ。

そう私は自分に言い聞かせたのだった。
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