人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「その点は着々と進んでいますぞ。やはりブライトウェル公爵が仲間に加わってくださったというのが大きいですな」

私がその課題を指摘すると、ノランド辺境伯は大きく頷き同意を示したうえで、こう言った。

王都の貴族もエドワード様に不安を覚えている者が増えているそうで、私側に付きたいと考えている者が多いらしいのだ。

「先日の舞踏会で王太子殿下を見限る者が存外多かったのですよ。会話を交わしても今の国の情勢に全く通じておられず、政務は臣下に丸投げな様子が露呈しておりましたからな。それに寵愛する側妃の言いなりのようで、側妃の生家である子爵家を重用することにも反感を持っている者は多いのです」

ミランダ嬢の父である伯爵が、王都回りの貴族の動向を補足するように述べた。

私が思っている以上にエドワード様に対して悪感情を抱いている者は多かったようだ。

「ただし、ブライトウェル公爵の名前が一人歩きして王宮で警戒が強まるのはよろしくないですからな。あくまで反乱軍の首謀者はノランド辺境伯家であると思わせるようにします。ブライトウェル公爵のことはきちんと見極めて必要な人物にのみ伝えて情報漏洩が起こらないように気をつける所存ですぞ」

ノランド辺境伯はさすがにこういった情報の扱いにも慎重な姿勢を見せた。

戦場でも情報によって戦況がひっくり返るということがあるゆえに、心得ているのだろう。

私たちはその後も話し合いを重ね、王都の貴族の引き入れを直近の行動指針とし、これだけ戦力が揃ったら決行をしようという戦力目標を定めた。

各々の役割分担を確認し、その日はそれで解散となった。


◇◇◇

「ロイド様、少しお待ちになってくださいね。エドワード様ったら疲れ果てて私の寝台で寝てしまわれたの。でももうすぐ目を覚まされると思いますわ」

決裁をもらうために先触れを出して訪れた側妃の離宮で、私は待ちぼうけを喰らわされていた。

なぜかエドワード様に代わってマティルデ様がやってきて、当たり前のように私の対面の席に座って紅茶を啜り出す。

エドワード様がいないのをいいことに、誘うような色目を向けられて嫌悪感が込み上げてくるのを止められない。

「そういえばいつぞやの舞踏会では驚かされましたわ。ロイド様がダンスを踊られるのなんて初めて目にしましたもの。お嫌いなのかと思っていましたのに。エドワード様が私に夢中でアリシア様を放ったらかしになさっていたので取り繕ってくださったのでしょう? 顔を隠した女となんて踊っていても楽しくなかったですわよね。次の舞踏会ではぜひ私と踊りましょうね? ふふっ、もちろんエドワード様には私から許可を得ておきますので心配なさらないで」
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