人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
寝室の中を反乱軍が隈なく捜索しているが、気配がない。

「知らないですわ! 今日は何かご用事があるとかで、少し前に離宮を出て行かれたのです」

「行き先の心当たりは?」

「さぁ、おっしゃらなかったので分かりませんわ。てっきり政務かと思っておりましたもの」

嘘をついているのではとマティルデ様を検分するが、本当に知らないようだ。

てっきりいつものように2人でいるはずだと予想していたが、運が悪いことに当てが外れてしまった。

「マティルデ様の言ってることは事実だろうな。エドワード様は離宮にはいないようだ。捜索範囲を広げなければならないな」

「できるだけ離宮で完結させるつもりでしたが、そうもいかなくなりましたな」

ノランド辺境伯と方針を話し合い、反乱軍の主力部隊はエドワード様のいる可能性の高い本殿を、それ以外の者はまだ未捜索の場所に散らばって探すこととなった。

エドワード様の拘束が成し遂げられなければ、この反乱は失敗に終わる。

逃げられないようになんとしてでも見つけ出さなければならない。

マティルデ様の見張りを一部に任せ、主力部隊は本殿へと急ぐ。

すでに王宮内は反乱軍が攻め入って来たことが全体に伝わっているようで、混乱の渦中にあり、戦う者、我れ先にと逃げ出す者、部屋に籠る者と入り乱れていた。

 ……アリシア様は大丈夫だろうか。

この混乱状態の中、アリシア様に害が及ぶのではと心配でならない。

だが、今はまずエドワード様を見つけ出して拘束しなければ、アリシア様の無事を確認しに行くこともままならなかった。

「殿下の執務室内、お姿ありませんっ!」
「殿下の居室にもいらっしゃいませんっ!」
「謁見の間と大広間も同じですっ!」

本殿内の捜索が進むが、次々に上がってくるのはいないという報告ばかりだ。

 ……一体、エドワード様はどこに?

その時、勢いよく反乱軍の一人が駆け込んできた。

「報告しますっ! 変装をした王太子殿下を王宮の正門付近で見かけたという目撃情報がありましたっ!」

「なに、変装だと⁉︎ しかも正門ということは王宮を見捨てて逃げだそうとしているのか。本来制圧のために指揮を取るべき立場であるというのに、どこまでも腐っている!」

報告を聞いたノランド辺境伯が猛然と怒り出す。

他の反乱軍の者たちからも逃がしてなるものかという闘志が一層メラメラと激しく燃え出した。

「念のため、引き続き本殿を捜索する部隊と、正門へ向かう部隊に別れ、急ぎ正門へ向かおう」

「賛成ですな。誤情報という可能性も捨てきれないですからな」

ノランド辺境伯が素早く采配を振るい、部隊を分けると、私とノランド辺境伯を中心とした部隊は正門へと急いだ。
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