人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「ロ、ロイド⁉︎ お前がなぜノランド辺境伯と共に反乱軍の中にいるのだ⁉︎」

驚きながらも責めるような口調を私に向けてくるエドワード様に冷ややかな視線を送る。

もはや側近である気持ちも、忠誠心のカケラも一切なかった。

お亡くなりになった陛下は素晴らしい国王だったが、ただ一つ、息子への教育だけは不十分だったことが悔やまれる。

「簡単なことですよ。私も反乱軍の一員だからです。エドワード様が拘束されたのちは、陛下が亡くなった今、私が王位に就くつもりです」

「なんだと!」

「エドワード様、王族は特権を享受するだけでなく、立場に応じた責務も果たす必要があるのです。あなたは臣下や民を一度でも顧みましたか? 国はあなたの所有物ではありません。陛下が築いてきた治世を壊しかねないエドワード様に私も危機感を持ちました。政務も完全に放り投げていらっしゃる実態も知っておりますから」

「だからといって、裏切ったのか⁉︎ 私たちは血の繋がった従兄弟であろう? なんとも思わないというのか⁉︎」

「最初はもちろんそんなつもりはありませんでした。側近として何度も反乱の兆しがある旨はご忠告したではないですか。それを聞き流されたのはエドワード様です。それに私にも何よりも大切にしたいことができたので、申し訳ありませんが、そのためにこの道を選びました。エドワード様のお命を奪うつもりはありませんし、血縁ゆえの温情としてマティルデ様と一緒にいられるよう同じ場所へ追放するようにいたしましょう」

「なっ……!」

目を丸くして口をパクパクするエドワード様を尻目に、反乱軍へ指示を出し、エドワード様および取り巻き側近たちを拘束する。

エドワード様は拒否するように抵抗したが、所詮はいつも人に守られているだけで鍛えていない身だ。

屈強な反乱軍の男たちにはもちろん敵うはずもなく、負け犬の遠吠えよろしく最後まで抗議の声を上げてはいたものの、アッサリと手に縄をかけられることとなった。

この瞬間、反乱が成立した。

「反乱軍は王家の制圧を完了した。そのため今この瞬間から王宮は、私、ロイド・ブライトウェルの指揮下に入る。反乱軍は正規軍として速やかに王宮内の武装解除にあたり混乱の鎮圧を図れ。抵抗する者や不審な者は一旦拘束、それ以外の者には危害を加えないように」

「「「「はっ!!」」」」

勝利宣言と同時にこの事態を収拾させるための指示を飛ばした私に従い、蜘蛛の子を散らすように一斉に皆が動き出す。

拘束されたエドワード様や取り巻き側近達も引き摺られるように牢屋へと連れて行かれた。

 ……恐れ多いことに私はこれからこのユルラシア王国の国王になることになる。臣下である自分がエドワード様に放った台詞や今この瞬間を私はずっと忘れないでいよう。二度と反乱など起こらないような治世を築いていくのだ。そして愛する人も必ず幸せにしてみせる。

エドワード様の後ろ姿を見送りながら、私は心の中で自分自身に誓いを立てたのだった。
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