人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
その言葉に喜びが電流のように駆け巡った。

頬がみるみるうちに紅潮していくのを感じる。

男性から愛の言葉を贈られるのは、前世も含めて初めてのことで、どう答えて良いのか分からず言葉が出てこない。

自分でも驚くほど動揺し狼狽えていた。

そんな私を見てロイドは愛しそうな眼差しをして小さく笑う。

「そんなに驚かれますか? あの時、独り言で遠回しではありましたが、私の想いは伝えたつもりでしたが?」

「だ、だって、あれ以来まったく顔を見せてくれなかったじゃない。だからてっきりあの場だけのことだと思って……。私も気持ちに折り合いをつけて婚姻に向けて心の準備をしなければってこの1ヶ月半ずっと思っていたのだもの」

「私も本当はアリシア様にお会いしたかったですよ。ただ舞踏会で注目を集めてしまったので私たちの関係を邪推する貴族が現れることを懸念したのです。特に反乱の前だったので行動にはより慎重にならざるを得ませんでした」

「そうだったのね……」

「……1ヶ月半の間で、私と素顔で三曲連続踊ってみたいとおっしゃった気持ちは変わられてしまいましたか?」

「いいえ! いくら考えてもそれが叶うはずはないって現実を見て諦めてはいたけれど、気持ちは変わっていないわ」

「ということは、アリシア様も私を異性として好意を寄せてくださっていると思ってもよろしいのですか?」

「…………!」

改めて真正面から問いかけられ、体がかあっと燃えるような恥ずかしさを感じる。

照れにより逸らした視線は行き場がなくなり、辺りを彷徨った。

 ……自分の好意を人に伝えるってこんなに恥ずかしいことなのね。今まで縁がなさすぎてどうしていいかサッパリ分からないわ……!

これくらいのことで混乱して無言になる私はきっといちいち手間のかかる面倒な女に違いない。

マティルデ様だったら相手の男性が喜ぶような言葉をいとも簡単に紡ぐのだろうと思うと自分の女性としての未熟さを感じずにはいられなかった。

だけどロイドは苛立ったり、嫌悪を見せることはなく、むしろますます機嫌良さそうに目を細める。

ふいに伸びてきた手は、私の頬にそっと触れ、そのことで彷徨っていた私の視線はロイドの方へ向く。

そして再び吸い込まれるように美しい赤い瞳と目が合った。
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