人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「照れているアリシア様も可愛らしいのでもう少し見ていたいところではありますが、やはりハッキリ気持ちを伺いたいです。もうエドワード様を気にして言葉を控える必要はありません。アリシア様、愛しています。あなたの想いも私に聞かせください」

「わ、私の気持ちは、その、あの……」

どもる私をロイドは懇願するような色を目に浮かべてじっと見つめる。

ロイドが切実に私の言葉を聞きたくてしょうがないのだということが伝わってきた。

私は恥ずかしさをなんとか押し込め、顔を赤らめながら必死で口を開く。

「わ、私もロイドのことを男性として愛しているわ……!」

「……っ」

次の瞬間、言葉を詰まらせたロイドに体を引き寄せられ、私はロイドの腕の中にすっぽりと収まっていた。

それはダンスの時とはまた違う距離感で、明確に意思を持って触れ合った体勢であり、あの時以上の近さだ。

私の顔は広い胸に押し付けられていて、トクントクンというロイドの鼓動の音まで感じられた。

「……やっとこうしてアリシア様に触れることができました。お互い素顔で三度連続踊ることだって今ならできます」

抱きしめられて苦しいくらいドキドキする中、噛み締めるように言葉を漏らしたロイドに私は問いかける。

「……できるの? 本当に?」

「ええ。エドワード様はもう王族ではありません。今後は爵位もなく、政治に関われないよう辺境の地に追放する予定です。もうアリシア様の婚約者ではありません」

「……でも私がエドワード殿下と婚姻を結ばなければユルラシア王国とリズベルト王国の同盟に綻びが生じてしまうわ。また戦乱になってしまうかも……」

「心配いりませんよ。アリシア様と私が婚姻を結べば良いのです。さっきも申し上げた通り、私は新国王となります。もともとアリシア様は同盟のためにユルラシア王国の王族のもとへ嫁ぐ予定だったのですから、相手が代わっただけで履行すれば問題ありません。……それとも私との婚姻は嫌ですか?」

「まさか! そんなはずないでしょう? ……ただ、その、なんだかあまりにも私に都合が良すぎて信じられないというか、心が追いつかなくて」

結婚して形式上の王太子妃となり、冷遇を受ける愛されないお飾り妃として生きていくのだとずっと覚悟していた。

なのにそれが一転、初めて異性として好きになった人と結婚できて、しかも相手からも愛を返してもらえるという、前世も含めた私の人生史上ありえない幸運が舞い込んできたのだ。

衣食住に苦労しない生活であるだけで幸せな中、私には過ぎた幸せのような気がして少し身震いがする。
< 149 / 163 >

この作品をシェア

pagetop