人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「思い返せば、私は一度もあなたにきちんと求婚していないと思ったのです。反乱が成り、エドワード様が追放され私が国王になったことで、国同士の同盟の都合もあり、あなたは自動的に私の妃になる立場になりました。私との婚姻は嫌ではないと、そして私に好意を持ってくださっているとは言ってくださいましたが、あなたに選択肢がなかったこともまた事実です」

「確かにそれはそうだけど、でも……」

「正直、私はアリシアを手に入れることができたことに浮かれていました。恋焦がれたあなたが私の妃になってくれるのです。もともと決まっていたことを履行するだけだとしても、どんな形でも良かった」

「ロイド……」

「ただ、ふと思ったのです。あなたは私の妃になるのは自分の身分ゆえだと思っているのではないかと。もしそうだとしたら、それは私がきちんと求婚していないからに他なりません」

つい先程私が思ったことをまるで見透かしたような発言だった。

相変わらずロイドは私の心の中を推し量るのがとんでもなく上手だ。

「……本当にさすがロイドね。なんでもお見通しだわ」

「やはりですか。そんな気がしたのです。……改めて申し上げます。私はアリシアを愛していて、だからこそあなたと結婚したいのです。私の妃になって、一生そばにいて欲しい。それはアリシアがリズベルト王国の王女だからという理由ではありません。たまたま王女という身分であっただけで、私はアリシア自身が欲しいのです。……こんな私と結婚してくださいますか?」

ロイドの紡ぐ言葉の一つ一つが心に沁みる。

王女としての身分しか価値がないというようにこの国へ人質同然に来た私を、彼はアリシアという1人の人間として求めてくれている。

そのことが嬉しくて嬉しくて胸が締め付けられた。

うっすら目に涙が浮かんできて視界が滲んでしまう。

「ロイド、ありがとう……! 本当に本当に嬉しい。私もあなたを愛しているし、あなたの妃になってずっとそばにいたい。国王だからではなく、ロイド自身を愛しているわ……!」

感動に震えていた私は、今日この瞬間は照れることなく、ロイドに応えるように自然と言葉が口をついて出た。
< 158 / 163 >

この作品をシェア

pagetop