人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
最近ではユルラシア王国の貴族や派閥、国の情勢など政治的なことも、私が知っておいた方がいいことは教えてくれた。

正直なところ、全然知識がなかったから助かるし、実は監視役ではなく教育係なのではないかと思ってきたくらいだ。


「本当にロイドは政治のことから甘味のことまで幅広く物知りよね。すごいわ」

「アリシア様が尋ねてこられる幅が広いのだと思いますよ」

「そうかしら? ねぇ、ロイドは監視、いえ、連絡係だと言っていたけど、本当は教育係の間違いじゃないの?」

「教育係ではなく、連絡係で合っていますよ。まぁ今のところ、アリシア様からエドワード様への言伝(ことづて)を頼まれる機会はありませんが。いつも質問攻めですので」

「残念ながら、エドワード殿下に特段お伝えしたいことはないのよ。何か伝える必要があるなら、恵まれた生活をさせて頂きありがとうございますとお伝えしておいて?」

「……恵まれた生活、ですか?」

「ええ。住む部屋は綺麗だし、食事も美味しいし、1人しか侍女を自国から連れて来なかったからこの国の侍女も付けて頂いてるし、衣装も王家所有のものを使ってもいいって言われているし。とっても満足な生活だわ」

それは完全に心から出た私の感想だった。

前世貧乏だった経験があるゆえに、たとえ人質として色々行動が制限されていても、王族であるこの生活自体が恵まれていると私は感じているのだ。

なにしろ衣食住に心配する必要も、あくせく働く必要もないのだから。

これは自国にいた時から私がずっと感じていることで、さらに付け加えると、この国に来てからは身内の蔑みもないので精神的にも楽で、確実に私の生活の質は向上していた。


「……エドワード様にお会いする機会があればそのお言葉お伝えしておきます」

「あら? 側近なのに頻繁に会わないの? 執務室でお会いするのではないの?」

「……ええ、そうですね。おっしゃる通りです。今のは言葉の誤りですね」

「そうよね。でもまぁエドワード殿下は執務に加えて、側妃のもとに通うのにもお忙しいでしょうしね」


日中は執務に励み、夜は側妃と励むとなると時間的にも体力的に大変そうねと思いながら、ポロリと漏らせば、ロイドは不可解な顔をした。

なんでも物事をよく知っているロイドにしては珍しい表情だ。
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