人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
私は自身の従者に指示して、執務室から王宮の地図を持って来てもらい、それを見せながらアリシア王女に説明をした。

彼女は真剣に話を聞き、的確に質問を挟んでくる。

その姿は、人から何かを教えてもらい慣れている感じが漂っていた。

 ……自国でも何かを学んでいたのか? やけに人に教えてもらうことに抵抗がないし、質問も上手いな。

そんな感想を持ち、その日の訪問は終了した。

その3日後にまた王女の部屋を決まった時間に訪問する。

この日も前回同様、「伺いたいことがあるのだけど」と切り出され、思いもよらないことを質問された。

今回はユルラシア王国の甘味についてだ。

「やっぱり国によって食べ物って差があるでしょう? ユルラシア王国の甘味はどんなものがあって、何が人気なのか興味があって。ほら、もし今後お茶会を開催したり、お呼ばれしたりした時に知らないと困るから」

その理由もまたしても「確かにな」と納得させられるものだった。

貴族女性にとってお茶会は大事な社交の場であり、情報収集の場でもある。

特に高位貴族ともなれば、自分で主催することも多いものだ。

形だけの婚姻とはいえ、王太子妃となればアリシア王女もそういう場に出席する機会は多いだろうことは容易に想像がつく。

 ……いつも質問は先のことを見据えたもので、理由も納得がいくし、この王女は割と頭の良い女なのかもしれないな。

顔を合わせたのは3度目だったが、この頃にはすっかり性格の歪んだ我儘王女という印象は無くなっていた。

なぜそんなふうに言われているのだろうかと疑問に思うくらいだ。

そしてさらにその3日後、この日は前回質問を受けた甘味の実食も兼ねて、手土産に今人気のチョコレートを持参して訪問した。

そのチョコレートをお茶請けとし、紅茶を飲みながらこの日も応接間のソファーで向かい合う。

いつものようにアリシア王女からの質問はなかったので、逆に今度はこちらから知っておいた方が良いことを挙げてみたところ、見事に彼女は食い付いた。

自分の興味のあることしか耳を傾けないタイプではないらしい。

ユルラシア王国の貴族や派閥、国の情勢など政治的なことだったのだが、王女は熱心に聞き入り、的確に質問を挟み、真剣に学ぼうとする。

こんなに熱心に話を聞いてくれると、だんだん教えるのにも身が入り、楽しくもなってくるから不思議だ。
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