人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「ブライトウェル公爵の説明は本当にいつも分かりやすいわね」
「王女殿下が熱心に聞いてくださるからですよ」
「ねぇ、前から言おうと思ってたのだけど、その王女殿下って呼び方やめてくれない? 堅苦しいし、この国ではそんな大層な身分じゃないもの。名前でいいわよ」
「……名前というと、アリシア様、ですか?」
「本当は呼び捨てでも良いくらいなんだけど、さすがにそれは無理でしょう?」
「ええ、それはさすがに。ああ、でも私の名前は呼び捨てにしてくださって結構ですよ。私がアリシア様とお呼びするのに、アリシア様が家名で呼ぶのはおかしいですし」
「じゃあブライトウェル公爵のことは、今後ロイドと呼ばせてもらうわね」
実のところ、今は亡き母以外の女性に自分の名前を呼び捨てにされるのは初めてだった。
それを許す気になるような女が今までいなかったという意味でもある。
……いくら王女とはいえ、女に呼び捨てを許可してしまうなんて、私はどうかしているな。
最初は憂鬱で仕方なかった連絡係だったが、いつしかその時間は楽しみなものになっていて、忙しい執務の合間の息抜きとなっていた。
そして3日おきの訪問も5回目となり、アリシア王女がこの国に来て半月以上が経った頃、初めて会話の中でエドワード様の名前が出た。
私が話の流れでポロリと名前を出してしまったのだが、自分のことに無関心で放ったらかしにしている婚約者に良い感情を抱いているはずがないだろう。
まずかったかなと一瞬思った。
だが、アリシア様がその名前に反応して発した言葉は予想外のものであり、私の想像とは真逆のものだった。
「残念ながら、エドワード殿下に特段お伝えしたいことはないのよ。何か伝える必要があるなら、恵まれた生活をさせて頂きありがとうございますとお伝えしておいて?」
「……恵まれた生活、ですか?」
「ええ。住む部屋は綺麗だし、食事も美味しいし、1人しか侍女を自国から連れて来なかったからこの国の侍女も付けて頂いてるし、衣装も王家所有のものを使ってもいいって言われているし。とっても満足な生活だわ」
……恵まれた生活? 満足している? アリシア様は本気でそんなことを言っているのか?
耳を疑うセリフに絶句して、ベールで顔は見えないのに探るようにマジマジと彼女を見つめてしまう。
「王女殿下が熱心に聞いてくださるからですよ」
「ねぇ、前から言おうと思ってたのだけど、その王女殿下って呼び方やめてくれない? 堅苦しいし、この国ではそんな大層な身分じゃないもの。名前でいいわよ」
「……名前というと、アリシア様、ですか?」
「本当は呼び捨てでも良いくらいなんだけど、さすがにそれは無理でしょう?」
「ええ、それはさすがに。ああ、でも私の名前は呼び捨てにしてくださって結構ですよ。私がアリシア様とお呼びするのに、アリシア様が家名で呼ぶのはおかしいですし」
「じゃあブライトウェル公爵のことは、今後ロイドと呼ばせてもらうわね」
実のところ、今は亡き母以外の女性に自分の名前を呼び捨てにされるのは初めてだった。
それを許す気になるような女が今までいなかったという意味でもある。
……いくら王女とはいえ、女に呼び捨てを許可してしまうなんて、私はどうかしているな。
最初は憂鬱で仕方なかった連絡係だったが、いつしかその時間は楽しみなものになっていて、忙しい執務の合間の息抜きとなっていた。
そして3日おきの訪問も5回目となり、アリシア王女がこの国に来て半月以上が経った頃、初めて会話の中でエドワード様の名前が出た。
私が話の流れでポロリと名前を出してしまったのだが、自分のことに無関心で放ったらかしにしている婚約者に良い感情を抱いているはずがないだろう。
まずかったかなと一瞬思った。
だが、アリシア様がその名前に反応して発した言葉は予想外のものであり、私の想像とは真逆のものだった。
「残念ながら、エドワード殿下に特段お伝えしたいことはないのよ。何か伝える必要があるなら、恵まれた生活をさせて頂きありがとうございますとお伝えしておいて?」
「……恵まれた生活、ですか?」
「ええ。住む部屋は綺麗だし、食事も美味しいし、1人しか侍女を自国から連れて来なかったからこの国の侍女も付けて頂いてるし、衣装も王家所有のものを使ってもいいって言われているし。とっても満足な生活だわ」
……恵まれた生活? 満足している? アリシア様は本気でそんなことを言っているのか?
耳を疑うセリフに絶句して、ベールで顔は見えないのに探るようにマジマジと彼女を見つめてしまう。