人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる

06. 酒場への集客作戦

「エドガーさん、これ最高に美味しいわ! 酒場でこのクオリティの食事が出来るなんてすごいわね!」

「そんなに褒めてもらえるとは嬉しいね。シアさんは娘の恩人だから、遠慮なく食べてくれ。おかわりもあるぞ」

「じゃあ、さっそくおかわり頂くわ!」

「はいよ!」

私の目の前には、お皿から湯気が立ち上っている熱々のスープが提供される。

大きめにカットされた牛肉と野菜がごろごろと入っていて、塩、コショウ、ハーブでじっくり煮込まれたものだ。

牛肉から良い出汁が滲み出ているようでスープも味わい深く、とっても美味だった。

 ……まさにこういうのが食べたかったのよ。王宮で出される完成し尽くされた料理ではなく、この家庭料理感がたまらないのよね!

案内されてやって来たミアの父・エドガーさんが営む酒場で、私はエドガーさんの料理に舌鼓を打っていた。

エドガーさんはミアから先程の出来事を聞くと、それはそれは感謝してくれ、さっそくご自慢のスープを振る舞ってくれたのだ。

夜の営業に向けて開店準備中の店内に、贅沢にも私だけが座らせてもらい食事をさせてもらっている。

エドガーさんとミアは私の相手をしながら、営業に向けての準備を進めていた。

この酒場『フォルトゥナ』は、エドガーさんとミアの父娘2人でやっているそうで、まだオープンして1年くらいなのだという。

それまで他の店で料理人をしていたエドガーさんが満を持して自分の店を開店したそうだ。

前世の旅行番組で見たドイツのビアホールっぽい感じの雰囲気で、店内には長テーブルと長イスがあり、そこでワイワイ飲む大衆酒場のようだ。 

酒場だけど料理も美味しいというところが売りポイントなのだという。

「これだけ料理が美味しいのだもの、お客さんもたくさんできっと繁盛してるのね。そんなお店で食べさせてもらえて嬉しいわ」

「ははっ、シアさんは本当に美味そうに食うから俺も作り甲斐があるな。ただなぁ、残念ながらうちはそんなまだ繁盛してないんだ。週末はそこそこ客が入るようになってきたんだが、平日はなかなか厳しいな」

「父の言う通り、どうしても古くからある老舗店に客足が流れてしまうんです。まだうちは開店して1年なので知られていないっていうのもあるんですけど……」

エドガーさんが腕を組みながら難しい顔をしている隣で、ミアも補足するように現状を語る。

 ……せっかくこんなに美味しい料理を提供している酒場なのにお客さんが入らないなんてもったいないわね。
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