人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「お姉様が本当にお可哀想だわ。人質みたいなものなのでしょう? しかもお相手にはすでに寵妃がいて愛される見込みもないだなんて。同じ女性としてあんまりだと悔しく思いますわ」
「姉を心配するなんてエレーナは本当に優しい子だこと。お相手の王太子様も可愛いエレーナが嫁いでくるのを期待しているでしょうから、さぞガッカリされるでしょう。王太子様こそお可哀想だわ」
「お母様、私も王太子様のご期待に添えないのは心苦しく思っているの。でも心の弱い私には人質生活も愛のない結婚生活もとても耐えられそうにないもの。お姉様のような図太さが私にもあれば良かったのだけれど」
「エレーナ、あなたが気に病む必要なんてないのよ。エレーナには、陛下と私のように愛が溢れる幸せな結婚ができる婚姻先を見つけてあげますからね。大国とはいえ、どんな扱いを受けるか分からない元敵国へあなたを送り出すなんてとても私たちにはできないもの。そんな婚姻は裏切者のあの女が産んだ不義の子が相応しいわ」
「そうね、お母様のおっしゃる通りかもしれないわ。ねぇ、お姉様? 向こうの国に行かれたら少しは我儘を控えて大人しくなさった方がよろしくてよ? あと、王太子様をご不快にさせないために今のように常にベールで顔を隠してお過ごしになると良いと思うわ? 私、お姉様がとっても心配なの」
「まぁ! エレーナは本当に心優しい娘ですこと。少しは見習って欲しいものだわ」
私が何も口を挟まないのをいいことに、義母とエレーナは、小鳥がさえずるようにとめどなく喋る。
義母は私に明確な嫌悪を言葉に滲ませ、エレーナは一見姉を心配する妹を装いながらも見下しているのが丸分かりだった。
いかに酷い環境へ私が送られるのかを改めて言って聞かせることが目的のようだ。
この2人のこの態度はいつものことなので、じっと床の一点を見つめてやり過ごす。
2人が散々言いたいことを言い放ち満足したところで解放され、ようやく私は離れの自室に辿り着いた。
部屋で侍女と2人きりになるやいなや、私はベールを放り投げ、ドサリとベッドに倒れ込む。
久しぶりに王宮の本殿に足を運び、周囲の蔑む視線に晒されて疲れた。
それに慣れているとは言え、身内の心無い言葉の数々は、僅かながらも私の心を蝕むのだ。
「ああーっ! もう腹が立ちますっ! アリシア様はなんでいつもそんなに平気そうにしているんですかっ!」
私がベッドで王女らしからぬ姿でダラっとしていたら、堪りかねたように私付きの侍女ライラが声を張り上げた。
まるで私の代わりに怒るかのように感情を爆発させている。
「姉を心配するなんてエレーナは本当に優しい子だこと。お相手の王太子様も可愛いエレーナが嫁いでくるのを期待しているでしょうから、さぞガッカリされるでしょう。王太子様こそお可哀想だわ」
「お母様、私も王太子様のご期待に添えないのは心苦しく思っているの。でも心の弱い私には人質生活も愛のない結婚生活もとても耐えられそうにないもの。お姉様のような図太さが私にもあれば良かったのだけれど」
「エレーナ、あなたが気に病む必要なんてないのよ。エレーナには、陛下と私のように愛が溢れる幸せな結婚ができる婚姻先を見つけてあげますからね。大国とはいえ、どんな扱いを受けるか分からない元敵国へあなたを送り出すなんてとても私たちにはできないもの。そんな婚姻は裏切者のあの女が産んだ不義の子が相応しいわ」
「そうね、お母様のおっしゃる通りかもしれないわ。ねぇ、お姉様? 向こうの国に行かれたら少しは我儘を控えて大人しくなさった方がよろしくてよ? あと、王太子様をご不快にさせないために今のように常にベールで顔を隠してお過ごしになると良いと思うわ? 私、お姉様がとっても心配なの」
「まぁ! エレーナは本当に心優しい娘ですこと。少しは見習って欲しいものだわ」
私が何も口を挟まないのをいいことに、義母とエレーナは、小鳥がさえずるようにとめどなく喋る。
義母は私に明確な嫌悪を言葉に滲ませ、エレーナは一見姉を心配する妹を装いながらも見下しているのが丸分かりだった。
いかに酷い環境へ私が送られるのかを改めて言って聞かせることが目的のようだ。
この2人のこの態度はいつものことなので、じっと床の一点を見つめてやり過ごす。
2人が散々言いたいことを言い放ち満足したところで解放され、ようやく私は離れの自室に辿り着いた。
部屋で侍女と2人きりになるやいなや、私はベールを放り投げ、ドサリとベッドに倒れ込む。
久しぶりに王宮の本殿に足を運び、周囲の蔑む視線に晒されて疲れた。
それに慣れているとは言え、身内の心無い言葉の数々は、僅かながらも私の心を蝕むのだ。
「ああーっ! もう腹が立ちますっ! アリシア様はなんでいつもそんなに平気そうにしているんですかっ!」
私がベッドで王女らしからぬ姿でダラっとしていたら、堪りかねたように私付きの侍女ライラが声を張り上げた。
まるで私の代わりに怒るかのように感情を爆発させている。