人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「しょうがないわよ。事実なんだから」

「どこが事実なんですっ! 不義の子だなんて言い掛かりではないですかっ! 陛下も実の娘をこんな扱いするなんてどうかしてますっ!」

「ライラ、誰が聞いているかも分からないのに、陛下を批判するなんてやめなさい」

「でも……っ! 髪色のせいだけでっ!」


ライラは悔しそうに唇を噛み締めた。

私はリズベルト王国の国王と王妃の間に産まれた第一王女なのだが、産まれた瞬間から王妃の不義の子として白い目で見られて育った。

というのも、髪色が王家特有のプラチナブロンドではなかったからだ。

王家に産まれた子供はこれまで例外なく、銀髪のような美しい白金色の髪色を有していたのだが、私はハチミツのようなオレンジ色がかった金髪だったのだ。

待望の第一子、喜びの絶頂だった国王と王妃は愕然としたそうだ。

母である王妃は不義を否定したのだが、それを信じるものはおらず、仲睦まじかった2人の関係は一転したという。

心を病んだ母は廃人のようになり、次第に衰弱して私が2歳になる頃に亡くなった。

その頃ちょうど側妃に輝かんばかりの美しいプラチナブロンドを持つ女児エレーナが産まれたのも大きかったのだろう。


 ……この世界にはDNA鑑定なんてないから、いくら不義ではないと言い張っても証明できないものね。母はまさに悲劇のヒロインだったと思うわ。

当時まだ2歳だった私だが、実はこの頃のことはきちんと把握している。

というのも、私は産まれた時から前世の記憶を持ち、中身は成人していたからだ。

前世、私は日本という国で、貧乏暮らしにあえぐ苦労性の女の子だった。

最後の記憶が20歳頃だから若くして亡くなったのだろうと思われる。

気付いたらアリシアとして意識があり、どうやらここは異世界のようで、なにやら私を取り囲む周囲の人々の表情が凍り付いていると認識した。

不思議なことに相手の言葉がすぐに理解できた私は、赤ちゃんの姿で周囲の会話に耳を傾け、冷静に自分の立場を理解していた。

だから、母が亡くなった時は悲しかったが、父が私に冷たく当たるのも、側妃だった義母がその後王妃となり私を冷遇するのも、2人の間に産まれてプラチナブロンドを有するエレーナや弟が私を嘲笑うのも仕方がないと思えたのだ。

むしろ、前世が貧乏で苦労したせいか、妹や弟とは完全に扱いは異なるものの、一応王女として不自由なく王宮で過ごさせてくれたことに慈悲深いとさえ感じたものだ。
< 7 / 163 >

この作品をシェア

pagetop