人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「ご懸念の通りですが、私からエドワード様に確認しましたところ、監視付きであれば面会は許可が下りました。いかがされますか? お会いになりますか?」
「ちなみに使者はどなた?」
リズベルト王国の人間で私に会いたいという貴族にほとんど心当たりがない。
となると、何か厄介ごとに巻き込もうとして会いたいと言っている可能性がある。
……こっそり密書を渡されて何かお父様から命令を出されたら堪らないわ。資源提供の条件が厳しいからエドワード殿下を誘惑して籠絡しろとか言ってきそうだものね。
ありえそうなことを頭の中でツラツラと考えていた私だったが、アランの口から発せられた人物の名前を聞くと、即座にその可能性をポイっと投げ捨てた。
なぜならその人物は私に会いたいと本心で言ってくれるだろう数少ないリズベルト王国の貴族だったからだ。
「ぜひ会いたいわ! いつかしら? 今から?」
「はい。使者は王宮本殿の謁見の間の控え室にいらっしゃいますので、こちらの離宮の庭にお連れします。アリシア王女殿下は庭でお待ち頂けますか? 監視として私が立ち会いさせて頂きます」
「分かったわ。では庭に行きましょうか」
アランは近くにいる彼の従者に使者を連れてくるよう言付けると、私に続いて庭へと進む。
本殿の庭ほどの華やかさはないが、ささやかながらも花が咲いていて手入れされた庭でアランとともに待っていると、しばらくして従者に案内された1人の男性の姿が現れた。
鍛えられて引き締まった体つきの長身のその男性は、私の姿を目に入れると、強面の顔を瞬時に破顔した。
「アリシア様……!」
感極まったように私の名前を口にして、一直線にこちらへ向かってくる。
私のすぐ近くにいるアランはこの強面の男性の豹変ぶりに驚いたようで目を見開いていた。
使者として対面した時は、おそらくピクリとも笑わず見た目通りの態度だったのだろう。
「スヴェン、久しぶりね。相変わらずのようね」
私はそんなスヴェンの姿がありありと想像できて、思わず小さく笑いを溢しながら彼を見上げた。
スヴェンは顔立ちが怖いだけでなく、他者に対していつも堅い態度なのだが、昔から私にだけは優しい。
尻尾をぶんぶん振る大型犬のように見えるから不思議だ。
「でもスヴェンが使者だなんて驚いたわ。だって普通は文官側近が来るものでしょう? スヴェンは武官だし、騎士団の副団長なのに。何か事情でもあったの?」
そう、これだから私はまさか使者がスヴェンだとは思いもしなかったのだ。
侯爵家の嫡男で騎士団の副団長を務めるスヴェンは私の幼なじみなのだが、不義の子として虐げられる私とも普通に接してくれた数少ない貴族だった。
私の素顔を知る人物でもあり、実は王宮をこっそり抜け出す時にいつも護衛を務めてくれていた。
そして私に護身術を教え込んでくれた人でもある。
「ちなみに使者はどなた?」
リズベルト王国の人間で私に会いたいという貴族にほとんど心当たりがない。
となると、何か厄介ごとに巻き込もうとして会いたいと言っている可能性がある。
……こっそり密書を渡されて何かお父様から命令を出されたら堪らないわ。資源提供の条件が厳しいからエドワード殿下を誘惑して籠絡しろとか言ってきそうだものね。
ありえそうなことを頭の中でツラツラと考えていた私だったが、アランの口から発せられた人物の名前を聞くと、即座にその可能性をポイっと投げ捨てた。
なぜならその人物は私に会いたいと本心で言ってくれるだろう数少ないリズベルト王国の貴族だったからだ。
「ぜひ会いたいわ! いつかしら? 今から?」
「はい。使者は王宮本殿の謁見の間の控え室にいらっしゃいますので、こちらの離宮の庭にお連れします。アリシア王女殿下は庭でお待ち頂けますか? 監視として私が立ち会いさせて頂きます」
「分かったわ。では庭に行きましょうか」
アランは近くにいる彼の従者に使者を連れてくるよう言付けると、私に続いて庭へと進む。
本殿の庭ほどの華やかさはないが、ささやかながらも花が咲いていて手入れされた庭でアランとともに待っていると、しばらくして従者に案内された1人の男性の姿が現れた。
鍛えられて引き締まった体つきの長身のその男性は、私の姿を目に入れると、強面の顔を瞬時に破顔した。
「アリシア様……!」
感極まったように私の名前を口にして、一直線にこちらへ向かってくる。
私のすぐ近くにいるアランはこの強面の男性の豹変ぶりに驚いたようで目を見開いていた。
使者として対面した時は、おそらくピクリとも笑わず見た目通りの態度だったのだろう。
「スヴェン、久しぶりね。相変わらずのようね」
私はそんなスヴェンの姿がありありと想像できて、思わず小さく笑いを溢しながら彼を見上げた。
スヴェンは顔立ちが怖いだけでなく、他者に対していつも堅い態度なのだが、昔から私にだけは優しい。
尻尾をぶんぶん振る大型犬のように見えるから不思議だ。
「でもスヴェンが使者だなんて驚いたわ。だって普通は文官側近が来るものでしょう? スヴェンは武官だし、騎士団の副団長なのに。何か事情でもあったの?」
そう、これだから私はまさか使者がスヴェンだとは思いもしなかったのだ。
侯爵家の嫡男で騎士団の副団長を務めるスヴェンは私の幼なじみなのだが、不義の子として虐げられる私とも普通に接してくれた数少ない貴族だった。
私の素顔を知る人物でもあり、実は王宮をこっそり抜け出す時にいつも護衛を務めてくれていた。
そして私に護身術を教え込んでくれた人でもある。