人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
私たちは表面上はなんともない世間話の会話を繰り広げていたため、特に周囲から怪しまれるようなことはなかったようだ。

時間にして数分くらいの短い面会は終了し、スヴェンは私に深々と頭を下げると、従者に従って去って行った。

「アリシア様はずいぶんと使者であるリズベルト王国騎士団の副団長とは親しいのですね」

スヴェンが見えなくなると、その場に残ったアランが私に声をかけてきた。

怪訝に思っているという雰囲気ではなく、ただ単に感想を口にしたという感じだった。

よほどスヴェンの態度の落差に驚いたのだろう。

「ええ。スヴェンは幼少期からの付き合いなの」

「なるほど。私とロイドみたいな関係性ということですね。それにしてもアリシア様は城下町のことにご興味がおありなのですね」

「侍女からいつも話を聞いているし、興味はあるわ。あとロイドも色々教えてくれるのよ?」

「ロイドがですか?」

「そうよ。ロイドって優秀な教育係みたいよね? なんでも知っているし、教え方も上手だからいつも助かっているわ」

「そう、ですか……?」

私がそうロイドを称賛すると、アランは腑に落ちないと言うようにわずかに首を傾げた。

こっちこそアランのその態度に引っ掛かりを覚える。

私たちはお互いに不思議なものを見るような目を向け合っていたのだが、アランに次の予定が迫っていたため、それ以上突っ込むことはなく、その場を解散した。

私は部屋に戻り、ライラを呼び寄せると、スヴェンに会ったことや、2日後か3日後に城下町で会う予定であることを話す。

もちろんライラもスヴェンのことはよく知っているので、彼の名前を聞いて懐かしそうな顔を見せた。

「では、次に王宮を抜け出される際は前みたいにスヴェン様の護衛付きということですね。それは私としても安心です」

「次回だけよ。どうもスヴェンは私がこの国でこうしていることに責任を感じているみたいだから、会って監視下のない状態できちんと話してくるわ。前よりマシだって」

「はい。私はスヴェン様のお気持ちも分かります。きっと直接アリシア様とお話になればスヴェン様も少しは心が落ち着かれるでしょう」

ライラと話し合って、ライラの勤務状況とロイドの訪問日を鑑み、次回は2日後に王宮を抜け出すことに決まった。

あの取り繕った会話でスヴェンと意思疎通はできていたと感じたけど、本当に伝わっているだろうか。

それにスヴェンがなんだか思い詰めている様子だったのが心配だ。

一抹の不安を感じつつ、私は2日後に予定通り王宮を抜け出して、指定したフォルトゥナへと向かった。
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