人質生活を謳歌していた虐げられ王女は、美貌の公爵に愛を捧げられる
「ベールで顔を隠すのは、リズベルト王国の王族が婚姻するまで人に顔を見せないことを良しとする文化があるとのことでしたが、それは嘘だったのですか? もしかして抜け出すためにワザと顔を隠していました?」
「さすがロイド。その通りよ!」
「やはり……。先程、シアになにすますことについて伺った時、ユルラシア王国《《では》》とおっしゃっていましたが、もしや自国でもしていたのですか?」
……ホントにロイドは鋭いわ。私の些細な言葉尻から正解を導き出すなんてすごい!
華麗なる推測に、ある種感動しながら私は大きく首を縦に振る。
聞かれなければ自国でのことは言わないでおこうと思っていたが、ここまで言い当てられてしまえばそうもいかない。
私は話の流れに身を任せて、聞かれるままに素直に答えていく。
「ロイドの推測通りよ。私はリズベルト王国でも今と同じように普段はベールを付けていたの。王族やごく親しい人以外は私の顔を知らなかったから、同様のやり方で抜け出すのは簡単だったのよ」
「なぜ自国で王女のアリシア様が顔を隠す必要があるのです? しかもご存知かは分かりませんが、アリシア様は容姿が醜い上に我儘で性格まで歪んでいるという評判まであるのですよ。なぜそのような事実とは乖離の大きい話が広まっているのですか?」
「悪評のことももちろん把握しているわよ。だからバレにくかったという側面もあると思うわ」
「まさかご自身で流されたのですか?」
「いいえ、さすがに自分でそんな評判は流さないわよ。それに私がベールを付け出したのも、それを逆手に取って王宮を抜け出すようになったのも、正直全部なりゆきなのよね」
「なりゆき、ですか? どのような?」
そこで私は一瞬だけ口ごもる。
別に話しても良いのだが、この話はリズベルト王国の王家の醜聞にもなりうるかもしれない。
それが少しだけ頭をよぎった。
……醜聞と言っても、深刻なものではないし、今の王族への心象が悪くなるくらいのことだものね。もう私には関係ないし話してもいいかな? それにロイドなら言いふらしたりもしないだろうし。
父、義母、妹、弟の顔が順番に頭に浮かんでくるが、誰に対しても何の感情も湧いてこない。
血縁ではあるが、ただ血の繋がりがあるというだけで、肉親の情なんてものはなかった。
「さすがロイド。その通りよ!」
「やはり……。先程、シアになにすますことについて伺った時、ユルラシア王国《《では》》とおっしゃっていましたが、もしや自国でもしていたのですか?」
……ホントにロイドは鋭いわ。私の些細な言葉尻から正解を導き出すなんてすごい!
華麗なる推測に、ある種感動しながら私は大きく首を縦に振る。
聞かれなければ自国でのことは言わないでおこうと思っていたが、ここまで言い当てられてしまえばそうもいかない。
私は話の流れに身を任せて、聞かれるままに素直に答えていく。
「ロイドの推測通りよ。私はリズベルト王国でも今と同じように普段はベールを付けていたの。王族やごく親しい人以外は私の顔を知らなかったから、同様のやり方で抜け出すのは簡単だったのよ」
「なぜ自国で王女のアリシア様が顔を隠す必要があるのです? しかもご存知かは分かりませんが、アリシア様は容姿が醜い上に我儘で性格まで歪んでいるという評判まであるのですよ。なぜそのような事実とは乖離の大きい話が広まっているのですか?」
「悪評のことももちろん把握しているわよ。だからバレにくかったという側面もあると思うわ」
「まさかご自身で流されたのですか?」
「いいえ、さすがに自分でそんな評判は流さないわよ。それに私がベールを付け出したのも、それを逆手に取って王宮を抜け出すようになったのも、正直全部なりゆきなのよね」
「なりゆき、ですか? どのような?」
そこで私は一瞬だけ口ごもる。
別に話しても良いのだが、この話はリズベルト王国の王家の醜聞にもなりうるかもしれない。
それが少しだけ頭をよぎった。
……醜聞と言っても、深刻なものではないし、今の王族への心象が悪くなるくらいのことだものね。もう私には関係ないし話してもいいかな? それにロイドなら言いふらしたりもしないだろうし。
父、義母、妹、弟の顔が順番に頭に浮かんでくるが、誰に対しても何の感情も湧いてこない。
血縁ではあるが、ただ血の繋がりがあるというだけで、肉親の情なんてものはなかった。