攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜

「起きていたんですね。フェリシー様」

「…………」

 
 肩まである水色のストレートな髪、白いフリフリのエプロンをつけたメイド服に、頭についたレースのヘッドアクセ。
 見慣れた姿のはずなのに、前世を思い出したあとだからか非常に違和感がある。



 本物のメイドさんだ!!!
 髪も水色って!! すごい! 異世界すごい!



 謎の感動に包まれている私を、マゼランは遠慮することなく睨みつけてくる。


「なんですか? 先ほど頭を強く打たれてたけど、そのせいでおかしくなりました?」

「え? 私、頭を強く打ったの?」

「はい。記憶にないんですか?」

「…………」



 も、もしかして、その衝撃で前世を思い出しちゃったってこと?



「とりあえず意識は戻ったようなので、エリオット様とディラン様に報告してきます」


 私の様子がおかしいと言うわりには、心配する素振りもないままマゼランは部屋から出ていった。
 そんな態度には今さら驚いたりしない。



 報告しなきゃいけないから様子を見に来ただけなのね。それより……。



 すぐにベッドから降りて、私は全身鏡の前に立った。
 改めて自分の姿を確認するためだ。


「……すごい可愛い……っ! 私って、こんなに可愛かったの……?」


 真っ白な肌に、まつ毛の長い大きな目。赤い瞳は、ルビーのように輝いて見える。
 ゆるふわなピンク色の髪には艶があり、手足も長くてとても細い。
 17年間特になんとも思ってなかったけど、今ならどれだけ恵まれた容姿なのかがよくわかる。



 ダイエットいらずの体型に、生まれ持っての美少女……!
 異世界ってやっぱりすごい!!



「……でも、家族運がないのは同じか」



 鏡の中の美少女が、少し悲しそうにフッと笑う。

 思い出したばかりの前世の自分。身寄りがなく、18歳で孤児院を出て働きながら1人で暮らしていた。
 今の私も、幼い頃に両親を亡くしてずっと孤児院で暮らしていた。

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